“聴くべきコンサート”である以上に“体験すべきコンサート”
ベテランも若い世代も隔たりなく、世界中の弦楽四重奏団がその高峰へ挑戦し続けるという絶対神のごとき存在が、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲。その威容は演奏家だけでなく聴衆にとっても圧倒的であり、だからこそホールへ足を運んで答えを見つけ出そうとするのだろう。
ヴィオリストの今井信子が中心となって結成されたミケランジェロ弦楽四重奏団は、王子ホールにおけるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲シリーズを2015年2月にスタートさせ、まずは3回のコンサートで9曲を演奏。満員の聴衆はその集中力と凝縮された音楽に賛辞を送り、後半となる3回への期待を膨らませた。1年後となる16年2月、いよいよ第4回〜第6回(Vol.4〜6)が3日間で集中的に行われ、「大フーガ op.133」を含む全9曲が演奏される。
第4回は長調の3曲が並び、第5回は長大な第14番ほかの3曲。そしてファイナルとなる第6回は、第13番とそれに続く「大フーガ」ほか変ロ長調づくしのプログラム。三者三様でありながらもベートーヴェン特有の精神性にあふれ、それがミケランジェロQというフィルターを通して純度を高めるのだ。メンバー4人の意識も各曲を演奏するたびに刷新され、短期間で何曲も演奏するとますます作品への共感度が高まるというから、1年前の経験と成果が今回の演奏にも反映されるのだろう。これは“聴くべきコンサート”である以上に“体験すべきコンサート”なのだ。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)
Vol.4 2/16(火)19:00 第5番・第9番「ラズモフスキー第3番」・第12番
Vol.5 2/18(木)19:00 第10番「ハープ」・第2番・第14番
Vol.6 2/20(土)15:00 第6番・第13番・「大フーガ」
王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990
http://www.ojihall.jp