紫園香(フルート)、デビュー45周年――積み重ねた45年、その先の景色を見つめて

 紫園香は、20世紀最高の演奏家であり指導者と評されるマルセル・モイーズの薫陶を受けたフルーティストである。日本はもちろん、世界24ヵ国で演奏を行い、高い評価を得てきた。そんな彼女が今年デビュー45周年を迎え、「未来への風」と題したリサイタルを開催する。紫園にとって特別な存在であるバッハをはじめ、さまざまな時代の作品が並ぶ。

 「プログラム全体のテーマとしては、バッハの遺した“音楽の唯一の目的は、神の栄光が表され、人の魂が再生されることでなければならない”という言葉が大きく関わっています。この言葉を実現したいと思いながら演奏家として45年模索し続けるなかで、現在の自分がそれをどれだけ表現できるのか確かめてみたい、というところを軸にプログラムを構成しました」

 前半は、紫園が敬愛し研究を続けてきたバッハへのオマージュともいえる内容だ。

 「冒頭は、バッハの弟子の一人であるミューテルの作品です。最晩年のバッハと関わりがあったとされる作曲家であり、バッハへの想いを寄せる意味を込めて選曲しました。バッハの『シャコンヌ』は、ヴァイオリン作品をフルートで吹くということ自体が非常に難しいのですが、挑戦するなら今しかないと思いました。オルガン・ソナタ(トリオ・ソナタ)は、彼が息子を優秀なオルガニストに育てるために書いた楽曲で、全6曲いずれも魅力的ですが、今回は調性の流れを考慮してBWV525を選びました」

 後半は近現代の作品が並び、紫園の洗練された技術、多彩な音色、豊かな表現力が堪能できるプログラムとなっている。

 「ムチンスキーは以前から演奏したいと思っていた作品で、ついに舞台に乗せることができてとてもうれしいです。新曲は30年来の親友であり、私と同じくクリスチャンである柳瀬佐和子さんにお願いし、聖書の言葉“風は思いのままに吹く”をモチーフにした『ラプソディ“未来への風”』を作っていただきました。肉体は衰えても、それを超えて豊かになっていく“霊の命”を感じていただける作品になっていると思います。ロータの『フルートのためのトリオ』は2年前にも取り上げましたが、大好きな作品なので、今回のメンバー(ピアノ:蓼沼明美、ヴァイオリン:沼田園子)で改めてお聴きいただけたらと選びました。銘器ムラマツフルート24Ksrも聴きどころです」

 これまでの歩みとともに、演奏・指導、そして被災地支援と多方面に活動の幅を広げる紫園が見据える音楽の未来や希望を感じさせるリサイタルは、多くの人々の心を打つことだろう。

取材・文:長井進之介

(ぶらあぼ2026年10月号より)

紫園 香 デビュー45周年記念リサイタル ~未来への風~
2026.10/24(土)14:00 浜離宮朝日ホール
問 ミリオンコンサート協会03-3501-5638
http://www.millionconcert.co.jp


長井進之介 Shinnosuke Nagai

国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
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