
2022年から、自身のデビュー40周年(2025年)に向け、これまでの演奏活動で縁の深いマエストロたちとピアノ協奏曲を演奏するシリーズ〈以心伝心〉をサントリーホールで開催してきた小山実稚恵。それに続き、同ホールの開館40周年となる今年からは〈未来永劫〉と題したリサイタル・シリーズを始めた。彼女が特に思いを馳せる作曲家、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン、バッハに焦点をあて、それぞれの代表的作品を演奏する2年がかりのシリーズである。第1回は6月に開催され、ベートーヴェンの最後の3つのピアノ・ソナタを弾いた。これまでの演奏よりさらに深みが増していて、作品の細部まで彫琢された小山の演奏が、晩年のベートーヴェンの孤高を見事に表現していた。
10月29日の第2回は、小山が「言葉もないほど、あまりにも美しすぎる」と語る、シューベルトの最後の3つのピアノ・ソナタを取り上げる。ベートーヴェンと同時代を生きながら、30代前半という若さでこの世を去ったシューベルト。彼の人生最後の時期の作品であり、小山はこれまでも熱い想いを込めて、その3つのソナタを演奏してきた。今回は特別なシリーズとなり、ベートーヴェンの回で聴かせてくれた深い共感をもとにした表現を、まさに白鳥の歌と言えるこの3曲でも聴くことができるだろう。そこに〈未来永劫〉の響きを聴き取りたい。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2026年10月号より)
小山実稚恵(ピアノ) サントリーホール・シリーズⅡ 2026-27
Recital〈未来永劫〉 第2回
2026.10/29(木)19:00 サントリーホール
問 サントリーホールチケットセンター0570-55-0017
https://suntoryhall.pia.jp

片桐卓也 Takuya Katagiri
1956年8月、福島県生まれ。早稲田大学在学中からフリーランスとして仕事を始め、映画、旅、自動車などの雑誌に関わる。1990年ごろから本格的にクラシック音楽関係の取材を始め、音楽雑誌に寄稿している。他に、コンサートの曲目解説、録音のライナーノーツの執筆なども多数。余裕があれば、バロック期のオペラを聴きにヨーロッパへ出かけている。趣味は都会の廃墟探訪。
