ベートーヴェンの解釈者としてゆるぎない地位を確立している内田光子が、ピアノ史において特別な意味を持つ後期の3大ソナタの録音にふたたび臨んだ。初録音の2005年から21年ぶりとなる今回は、25年10月に行ったリサイタルのライブ録音。一つひとつの音色の磨き上げられた美しさ、各パッセージの処理の洗練など、輝きに満ちた音楽づくりがこれらのソナタに宿る精神性をいっそう純度高く浮かび上がらせている。とりわけ第32番では、ベートーヴェンが晩年に到達した境地が、内田の深い洞察とライブならではの緊張感の中で静かに開示され、聴き手を作品の核心へと導いていく。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2026年9月号より)
【information】
CD『ベートーヴェン・ライヴ ~後期3大ソナタ/内田光子』
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番〜第32番
内田光子(ピアノ)
収録:2025年10月、サントリーホール(ライブ)
ユニバーサル ミュージック
UCCD-45043 ¥3300(税込)

長井進之介 Shinnosuke Nagai
国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
X(旧Twitter) https://x.com/Shinno1102
Instagram https://www.instagram.com/shinno_pf/


