【SACD】ブラームス:クラリネット・ソナタ集/亀井良信&鈴木慎崇

 落ち着いた佇まいで飾り立てた表現を捨て、まっすぐに作品へ向かい合った。亀井のクラリネットにはスモーキーな渋みがあり、それが曲の哀愁や諦観とマッチしている。ブラームス(ソナタ1・2番)もシューマン(幻想小曲集)も最初の楽章を遅めのテンポで運ぶことで、息の流れ、楽器の個性、タンギングやレガートといった音のコントロールについての情報が豊かにもたらされる。ピアノとの掛け合いも丁寧だ。シューマンの歌曲(「6つの詩とレクイエム」の終曲)で閉じる選曲も興味深く、二人の作曲家が同じ系統の才能に属し、彼らの間に受け継がれているものが確かにあることが分かる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2026年1月号より)

【information】
SACD『ブラームス:クラリネット・ソナタ集/亀井良信&鈴木慎崇』

ブラームス:クラリネット・ソナタ第1番、同第2番/シューマン:幻想小曲集 op.73、レクイエム op.90-7

亀井良信(クラリネット)
鈴木慎崇(ピアノ)

オクタヴィア・レコード
OVCC-00182 ¥3520(税込)