大阪を本拠地とする4つのオーケストラ——大阪交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団——が11月26日、2026-2027シーズンプログラムに関する共同発表会を行った。会見には各団体の事務局代表者が出席し、新シーズンの注目ポイントが紹介された。
大阪交響楽団

今年創立45周年を迎えた大阪交響楽団は、新シーズンも山下一史(常任指揮者)、柴田真郁(ミュージックパートナー)、髙橋直史(首席客演指揮者)による指揮者体制を継続。
全8公演の定期演奏会のうち、山下は2公演に出演。
シーズン開幕の4月定期でR.シュトラウスの交響詩 「ツァラトゥストラはかく語りき」、 10月定期でブラームス「ドイツ・レクイエム」を指揮する。いずれも協奏曲を置かず、大阪響との5シーズン目の充実を印象付けるだろう。
柴田は得意のオペラ作品として、ラヴェルが書いた一幕もの《スペインの時》(演奏会形式)を取り上げる。キャストには砂田愛梨をはじめ日本を代表する精鋭が集結する。
ドイツ・エルツゲビルゲ歌劇場の音楽総監督を務めるなどヨーロッパで長く活躍してきた髙橋は、R.シュトラウス《サロメ》から「7つのヴェールの踊り」(管弦楽縮小版)他を披露する。
客演では小林資典(もとのり)に注目したい。26-27シーズンには東響ほか、国内オーケストラへの初登場が続くが、日本デビューは大阪響(2018年)。1月定期では、ピアノ独奏に川口成彦を迎えるロドリーゴの「英雄的協奏曲」(日本初演)の他、ラヴェル「マ・メール・ロワ」全曲版などで、ドイツの歌劇場たたき上げの手腕を示す。
進藤実優、周防亮介、石上真由子といった若手実力派ソリストにも期待したい。
新シーズンの定期演奏会チケットは、12月1日から電子チケットサービス「teket(テケト)」にて先行販売される。
大阪フィルハーモニー交響楽団

尾高忠明の音楽監督就任9季目となる大阪フィルの新シーズン。フェスティバルホールで行われる定期演奏会は全10回で、各回2公演ずつ開催される。
尾高はそのうち3回を指揮。4月定期に十八番のエルガー「エニグマ」、第600回記念の7月定期にブラームス「ドイツ・レクイエム」、1月定期にR.シュトラウス「メタモルフォーゼン」とマーラーの交響曲第4番と、ロマン派の名作を中心に取り上げる。
今季から“指揮者”のポストを務める地元出身の松本宗利音(しゅうりひと)は3月定期に登場。シューベルト「ザ・グレイト」と、ロンドン響のコンマス ロマン・シモヴィチと共演するバルトークの協奏曲第2番で、若きマエストロのタクトに注目したい。
客演陣では、ジョナサン・ノットが初登場し、得意のリゲティ作品から、トーンクラスターの中に抒情世界が立ち現れる「ロンターノ」、女声合唱を伴うドビュッシー「夜想曲」、ブラームス第1番という組み合わせで、プログラミングの妙も感じられるはずだ。他にも、ブリュッセル・フィル名誉指揮者のミシェル・タバシュニク、日本でもおなじみの準・メルクルら、国際的に活躍する指揮者が登壇する。
2月に行われる楽団創立80周年とザ・シンフォニーホールの開館45周年を記念した特別演奏会には、近年共演を重ねるエリアフ・インバルが登場。ブルックナーの8番(1887年ノヴァーク版 第1稿)でエネルギッシュな音楽を披露するだろう。
さらに、尾高が指揮する全4回の「ラフマニノフ・チクルス」も注目。BBCウェールズ・ナショナル管との全集で知られる尾高が、円熟のタクトでどのような物語を描くのか楽しみだ。
関西フィルハーモニー管弦楽団

藤岡幸夫(総監督・首席指揮者)との協働が27年目を迎える関西フィル。全9回の定期演奏会に藤岡は2回出演する。
4月定期は、藤岡がその歌声に惚れ込むソプラノの安川みくをソリストに迎えるマーラーの交響曲第4番。さらに、高校生トランペッター・児玉隼人との共演で、ドイツの現代作曲家B.A.ツィンマーマンの協奏曲「誰も知らない私の悩み」他を披露する。
10月定期では大阪出身の作曲家・山田竜雅の「祈り~女声と管弦楽のための」をメインに据える。この作品は、「200年後にも多くの人に愛されるオーケストラ曲を日本から生み出したい」という想いのもと、藤岡、山田和樹、鈴木優人、原田慶太楼の4人の指揮者が立ち上げた2022年のプロジェクトで生まれた作品。邦人作品の紹介を続ける藤岡が「激推し」する作曲家とのことなので、ぜひ注目したい。
パリ管へのデビューで話題の首席客演指揮者・鈴木優人はストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」(1947年版)、アーティスティック・パートナーを務めるマカオ生まれの新鋭リオ・クオクマンはショスタコーヴィチの交響曲第5番とプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番(独奏:小林愛実)、ドイツ生まれでベルリンを拠点に活躍する初登場の八嶋恵利奈はムソルグスキー(ラヴェル編)の「展覧会の絵」と、ロシア作品が多くラインナップされた。
前音楽監督(現名誉指揮者)のオーギュスタン・デュメイは来季も指揮に加えてヴァイオリン独奏も披露する。
ソリストでは、この10月のパガニーニ国際コンクールで第2位に入賞しデュメイにも師事する吉本梨乃、イタリア出身の世界的なクラリネットの名手アレッサンドロ・カルボナーレ、2022年までベルリン・フィルの首席フルート奏者を務めたマチュー・デュフォーらが登場。多彩な顔ぶれがそろった。
日本センチュリー交響楽団

今季から久石譲が音楽監督に就任し新体制がスタートした日本センチュリー響。ベートーヴェンを特集した今季に続き、新シーズンの定期演奏会ではブラームスを軸に展開する。全8回のプログラムには協奏曲を含むブラームスの管弦楽作品が組み込まれた。
さらに今季と同様、現代作品もほとんどの回でカップリングされる。そこには「クラシック音楽が古典芸能にならず、過去から現在、そして未来へとつながる歴史の中の一部であることを表現したい」という作曲家でもある久石ならではの意図が込められている。
久石は定期演奏会に3回出演。ブラームスのヴァイオリン協奏曲(独奏:郷古廉、久石作曲のカデンツァを使用)、「ドイツ・レクイエム」、そして交響曲第4番をそれぞれメインに据える。現代曲ではフィリップ・グラスの交響曲第1番に注目したい。ミニマル・ミュージックの大家であるグラス作品を、作曲家としてこのスタイルの作品を数多く手がける久石がどのように描くのか興味深い。
客演では、地元出身の出口大地の他、9月のブザンソン国際コンクール優勝の米田覚士、近年指揮活動を活発化させているアンドレアス・オッテンザマーら若き精鋭たちが登場。
ソリストにも勢いある若手がラインナップ。ロック・ギタリストでもあるブライス・デスナーの2台ピアノのための協奏曲を弾く坂本彩・リサ姉妹、神戸出身の三浦謙司、そして亀井聖矢ら実力派ピアニストが名を連ねる。
奇しくも2026-27シーズンでは、4団体すべてが定期演奏会でブラームス「ドイツ・レクイエム」を取り上げるという偶然も。各楽団がこの慰めと祈りの音楽にどう向き合うのか、シーズンを通した“聴き比べ”も興味をそそる。
会見では、大阪の春の風物詩として定着した合同演奏会「大阪4オケ」の概要も公開された。2026年のテーマは「4オケは踊る」。4団体がそれぞれバレエや舞踏の音楽を披露する。

文:編集部
写真提供:大阪4オーケストラ活性化協議会
第64回大阪国際フェスティバル2026
大阪4オケ 2026
2026.4/18(土)14:00 大阪/フェスティバルホール
藤岡幸夫(指揮) 関西フィルハーモニー管弦楽団
♪ヒナステラ:バレエ組曲「エスタンシア」
♪ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」第2組曲
山下一史(指揮) 大阪交響楽団
♪ラヴェル:バレエ組曲「マ・メール・ロワ」
♪ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2組曲
出口大地(指揮) 日本センチュリー交響楽団
♪團伊玖磨:管弦楽幻想曲「飛天繚乱」
♪バルトーク:舞踏組曲
尾高忠明(指揮) 大阪フィルハーモニー交響楽団
♪チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」(尾高セレクション)
問:フェスティバルホール チケットセンター06-6231-2221
https://www.festivalhall.jp





