モーツァルトの「レクイエム」&鬼才サイによるオマージュ作品。以前のベートーヴェン&ショスタコーヴィチ同様の“時代を超える”企画だ。前者はジュスマイヤー版を使用。サイの作品(モーツァルトと同編成)は13世紀のイスラム詩人メヴラーナの優しい詩を用いた音楽である。モーツァルト作品では、ピリオド奏法の流儀を採用した速めで生気溢れる音楽が、ピュアな味わいを醸し出す。サイの作品は中東色が濃いものの、質感はモーツァルトに通底しており、続けて聴いても違和感がない。しかも演奏陣にあらゆる宗教の人々が揃った、社会的意義も深い1枚だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2025年12月号より)
【information】
SACD『モーツァルト:レクイエム&サイ:モーツァルトとメヴラーナ/ミヒャエル・ザンデルリンク&ルツェルン響』
ミヒャエル・ザンデルリンク(指揮)
ルツェルン交響楽団
ファトマ・サイード(ソプラノ)
マリアンヌ・クレバッサ(メゾソプラノ)
ペネ・パティ(テノール)
アレクサンドロス・スタヴラカキス(バス)
ベルリン放送合唱団
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCS-13877 ¥3410(税込)



