神奈川フィルの2026-27シーズン・ラインナップ発表会見に沼尻竜典音楽監督が登場!

和服姿で登場した沼尻竜典

 神奈川フィルハーモニー管弦楽団が、2026-27シーズン(26年4月〜27年3月)のラインナップ発表記者会見を9月16日、横浜みなとみらいホールで行い、沼尻竜典音楽監督ら4名が出席した。
 新シーズンは「みなとみらい定期演奏会」(全9回)、「音楽堂シリーズ」(全3回)、25-26シーズンにスタートした「ミューザ川崎シリーズ」(全4回)の三本柱に加え、セミステージ形式のオペラ公演「Dramatic series」も引き続き実施される。

 就任5季目を迎える沼尻は全7公演を指揮。今季に続き、開幕公演の「みなとみらいシリーズ」ではショスタコーヴィチを取り上げる(4/18)。交響曲第5番に加え、ヴァイオリン協奏曲第2番では、首席ソロ・コンサートマスターの石田泰尚が独奏を務める。

沼尻「幼い頃、家にあった3、4枚のクラシックのレコードの中の1枚がショスタコーヴィチの5番でした。僕にとっては昭和の香りがプンプンするような名曲。作曲当時の体制に迎合して作った作品だという解釈もありますが、ショスタコーヴィチの心の叫びが込められたような音楽も感じられ、今から楽しみです」

 沼尻はこのほか、近年継続して取り上げているブルックナーの交響曲第7番(7/11)、マーラーの交響曲第3番(27.3/13)といった大規模作品でタクトをとる。また、ヴィオラの世界的巨匠・今井信子と共演するベルリオーズ「イタリアのハロルド」にも注目が集まる(26.11/28)。

 日本を代表するオペラ指揮者である沼尻が手掛ける「Dramatic series」では、今季のワーグナー《ラインの黄金》に続き、プッチーニ《トスカ》を披露する(6/20)。「従来の枠組みにとらわれないキャスティングや歌手の育成、オペラ界の活性化」を掲げた企画で、シリーズ初のイタリア・オペラの上演に期待が高まる。

 「みなとみらいシリーズ」では、他にも多彩なプログラムが用意されている。精緻な解釈で知られる高関健が、マーラーの交響曲第1番を2019年に改訂されたラインホルト・クービック版を用いて指揮する第414回(5/16)、浜松国際コンクール優勝やショパンコンクール第2位などの活躍で、日本でも高い人気を誇るピアニスト、アレクサンダー・ガジェヴ大植英次の共演(10/10)、さらに原田慶太楼がコープランドの交響曲やJ.ウィリアムズのテューバ協奏曲(独奏:宮西純)などを指揮するオール・アメリカン・プログラム(9/5)など、日本人指揮者の活躍が際立つ。

 「ミューザ川崎シリーズ」は、2027年3月のベートーヴェン没後200年に向け、引き続き「ベートーヴェン・リンク」をテーマに掲げる。
 交響曲第3番を取り上げる沼尻(27.3/3)、同2、8番を指揮する小泉和裕(26.6/7)に加えて、注目は第7番を振るコリア・ブラッハー(11/7)。ベルリン・フィルのコンサートマスターを務めた経歴をもち、金川真弓らを育てた名教師としても知られる巨匠で、初共演となった今年1月に続き再登場。ベートーヴェンでの指揮に加え、ブラームスのヴァイオリン協奏曲の弾き振りで円熟の音色を聴かせる。

 神奈川県立音楽堂を舞台とする「音楽堂シリーズ」は、バロックから新作まで、幅広い演目が揃った。
 目を引くのは、中世~バロック時代の作品を中心に指揮者、リコーダー/コルネット奏者として独自の演奏活動を展開し、古楽集団「アントネッロ」の主宰としても知られる濱田芳通の登場(5/30)。バッハの管弦楽組曲第3番やブランデンブルク協奏曲第4番に加え、ソプラノの中山美紀を迎えヘンデルの歌劇《リナルド》《ジュリオ・チェーザレ》からの名アリアでモダン・オケをどのように導くのか、注目される。
 また、昨シーズン、自作のオーケストラ作品「肖像」を自らの指揮で初演した阪田知樹は、新たに声楽を含む管弦楽作品(ソプラノ:森谷真理)を書き下ろす他、サン=サーンスのピアノ協奏曲第2番での弾き振りも予定している。
 そのほか、石田泰尚が率いる指揮者なしの公演(27.1/30)、近年活躍の場を広げる喜古恵理香による「弦楽器を使わないプログラム」(3/6)など、個性的な企画も予定されている。

文・写真:編集部

神奈川フィルハーモニー管弦楽団
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