ネーメ・ヤルヴィも20年ぶりに登場、縁深いマエストロ総出演の定期演奏会ラインナップ
2026年、創立70周年を迎える日本フィルハーモニー交響楽団。同年度の定期演奏会のラインナップ、そしてメモリアルイヤーを記念する特別演奏会に関する記者懇談会が9月11日、都内で行われ、首席指揮者のカーチュン・ウォンらが登壇した。

2025/26シーズンを周年のプレ期間と位置付け、次年度から定期演奏会のシーズン開始が4月となるよう調整を行うなど、アニバーサリーを前に着実に新たな体制を構築する日本フィル。満を持して迎える70周年の中でもビッグイベントとなるのが、カーチュンがマーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」を指揮する特別演奏会だ。2026年6月21日、そして楽団の創立記念日である6月22日にサントリーホールで開催される。
カーチュン「この作品は偉大なストーリーを持つ素晴らしい作品である一方で、非常に多くの人材も必要となります。今回は70周年記念ということで、演奏する機会がなかなかないこの作品をお届けしたいと思いました。
8人のソリストには、過去に日本フィルで共演した吉田珠代さんや三宅理恵さんをはじめ素晴らしい歌手をお迎えします。また合唱も、楽団と縁の深い団体(東京音楽大学、日本フィルハーモニー協会合唱団、武蔵野合唱団、杉並児童合唱団)と共演します」

一つの記念碑となる特別演奏会の他、カーチュンは6つのプログラムを指揮する。シーズンの幕開けとなる4月東京定期(4/10,11)では、意外にも日本では指揮したことがないという「第九」を、マーラー編曲版により披露。「新たなスコアとともに、日本のオーケストラとの『第九』のスタートを切りたいと考えた」故だという。マエストロ自ら編曲したムソルグスキー「展覧会の絵」を取り上げる10月の名曲コンサート(10/24)も目を引く。世界が一変したコロナ禍のロックダウン中、「自らのナショナル・アイデンティティについて考えるようになった」中で手掛けられたもので、笛子や胡琴、琵琶など様々な民族楽器が用いられる。
その後は、今年共演したばかりの名ピアニスト、サー・スティーヴン・ハフとの再会(11/21,11/22)や、「テレビで演奏を聴いてあまりの上手さに興奮し、すぐ日本フィルに共演のための電話をかけた」という俊英トランペッター・児玉隼人とのハイドンの協奏曲(2027.1/9,1/10)など、注目のソリストとの協働が続く。そして、ブルックナーの交響曲第8番一本勝負(27.1/29,1/30)を経て、ソロ・コンサートマスター 田野倉雅秋とのハチャトゥリアンのコンチェルト、レスピーギ「ローマの松」など“ユーラシアとローマ”をテーマにした3月横浜定期(27.3/27)でシーズンが締めくくられる。
「ともに時代を積み上げてきたマエストロへの感謝」が一つの大きな要素として含まれているという今回のラインナップ。中でも見逃せないのが、客員首席指揮者、ネーメ・ヤルヴィ20年ぶりの登場。昨年エストニア国立響と録音も行った注目のレパートリー、フルトヴェングラーの交響曲第2番で帰還を果たす(7/10,11)。桂冠指揮者兼芸術顧問、アレクサンドル・ラザレフは、これまで日本フィルと数多くの名演を残してきたショスタコーヴィチから、節目の年にふさわしい大曲・交響曲第7番「レニングラード」を披露(9/11,12)。他にも、小林研一郎(桂冠名誉指揮者)、広上淳一(フレンド・オブ・JPO(芸術顧問))、ピエタリ・インキネン(前首席指揮者)、山田和樹(元正指揮者)ら楽団と深い絆を育んできたマエストロが、個々の持ち味を発揮したプログラムでアニバーサリーを祝う。
また今回の懇談会は、今年6月に新たに理事長に就任した石塚邦雄(三越伊勢丹ホールディングス元社長/会長)がカーチュンと臨む初の会見となり、会長に就いた前理事長の平井俊邦とともに挨拶を行った。さらに70周年を機に、「共鳴を、熱いウェーブに」というスローガンのもとロゴマークを一新することも発表された。

一曲一曲が独自の世界観を持つマーラーの交響曲に取り組み続けることを「精神的な旅路」と表現し、「間隔を空けながら、非常に長期的な視野で考えていきたい」と語ったカーチュン。70周年、マイルストーンとなる「千人の交響曲」、そしてその先の歩みをじっくりと見届けたい。

写真・文:編集部
日本フィルハーモニー交響楽団
https://japanphil.or.jp/news/26670

