
写真提供:群馬交響楽団
群馬交響楽団の2026-2027シーズンの定期演奏会には、次代を担う俊英たちが集う。とりわけ、4月、7月、9月、11月、27年1月、3月の定期演奏会を振るのは、20代から30代の気鋭のマエストロたちである。
なかでも最も若いのは、7月に登場する2003年生まれのミカエル・ロポネン。クラウス・マケラやタルモ・ペルトコスキら、次々と若い指揮者を輩出しているフィンランド出身で、彼もまた、ヨルマ・パヌラ門下である。今回は、祖国のラウタヴァーラによる「アダージョ・チェレステ」やシベリウスの交響曲第2番を披露する。昨年のショパンコンクールで第4位に入賞した桑原志織とのベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番も楽しみ。
日本人マエストロでは、11月に、昨年のブザンソン国際若手指揮者コンクールで優勝した米田覚士が登場する。東京藝術大学を卒業後、2021年の東京国際音楽コンクール〈指揮〉で入選。翌年にはNHK交響楽団を指揮した。今回、R.シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」と楽劇《ばらの騎士》組曲で指揮者としての真価を示すに違いない。阪田知樹の弾くベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」も期待大だが、作曲も手がける阪田に委嘱したという管弦楽新作も興味津々だ。

ケンショウ・ワタナベ ©Abigel Kralik/出口大地 ©hiro.pberg berlin/
4月の定期演奏会を振るドイツ出身のオスカー・ヨッケルは1995年生まれ。ベルリン・フィルでキリル・ペトレンコのアシスタントを務め、作曲にも取り組む鬼才。当月には、東京二期会でベルクの《ルル》も指揮する。ヤナーチェク(マッケラス編)の《利口な女狐の物語》組曲とシューマンの交響曲 第1番「春」でどんな才能を示すのか注目である。ヴァイオリンの毛利文香も、ヴォーン・ウィリアムズ「揚げひばり」など春にまつわる作品を弾く。
9月のケンショウ・ワタナベは、サイトウ・キネン・オーケストラや東京フィルへの客演などで日本の音楽ファンにもお馴染み。近年は、メトロポリタン歌劇場で指揮するなど活躍の場を広げている。ソプラノの森谷真理とメゾソプラノの林眞暎を迎えてのマーラーの交響曲第2番「復活」は大いに期待したい。
2027年1月は、21年のハチャトゥリアン国際コンクール指揮部門優勝者である出口大地が登場。ストラヴィンスキーの「火の鳥」全曲(1910年版)、伊福部昭の「弦楽のための日本組曲」のほか、24年のリーズ国際ピアノコンクール優勝者のジェイデン・アイジク=ズルコが弾くベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番も聴き逃せない。
3月に客演するキリアン・ファレルは、1994年ダブリン生まれ、マイニンゲン州立劇場の音楽総監督を務め、2027年にはニュルンベルク州立劇場の音楽総監督に就任する。注目の俊英が取り上げるのはラフマニノフの交響曲第2番。北村朋幹の弾くベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番も大きな聴きどころとなる。本公演には九響メンバーも参加するという。

阪田知樹 ©Ayustet/ジェイデン・アイジク=ズルコ/北村朋幹 ©TAKA MAYUMI
40代になり、現在の音楽界で重要な役割を務めるマエストロたちも次々と登場。今年6月のユージン・ツィガーンは1981年東京生まれ。彼もまたヨルマ・パヌラに師事し、現在、フィンランドのクオピオ交響楽団の首席指揮者を務める。これまでに、都響、神奈川フィル、京響にも客演。今回は、ブルックナーの交響曲第7番(コールス版)を指揮する。
10月に登場するベルギー出身のデイヴィッド・レイランドは、都響や京響に客演したほか、すでに群馬交響楽団と共演し相性の良さを示した。再共演となる今回は、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」をメインに、群響が誇るホルンの名手、濵地宗が独奏を務めるトマジのホルン協奏曲など楽しみなプログラムが組まれている。
2027年2月は、アメリカのサヴァンナ・フィルやデイトン・フィルの音楽監督を務める原田慶太楼が客演。得意とするショスタコーヴィチの交響曲第5番のほか、芥川也寸志の「ヴァイオリンとオーケストラのための秋田地方の子守歌」などを指揮する。そして2015年のショパンコンクール第3位のケイト・リウがベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を弾く。
ベテランでは、群響桂冠指揮者で、今年86歳になる小林研一郎が5月の定期演奏会に登場し、自作の「パッサカリア」やベルリオーズの「幻想交響曲」などを振る。「幻想交響曲」では、音楽への変わらぬ情熱を披露してくれるに違いない。
2026年3月で常任指揮者・飯森範親が退任し、シェフ不在のシーズンにはなるが、若く優秀なマエストロが毎月のように登場し、例年以上にフレッシュな音楽を聴かせてくれることだろう。また、シーズンを通して通えば、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲をまさに今が旬のピアニストたちによって楽しむことができる。
文:山田治生
(ぶらあぼ2026年3月号より)
問:群馬交響楽団事務局(チケット専用)027-322-4944
https://www.gunkyo.com
※2026-27シーズンの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

山田治生 Haruo Yamada
音楽評論家。1964年、京都市生まれ。1987年慶應義塾大学経済学部卒業。雑誌や演奏会のプログラム冊子に寄稿。著書に「トスカニーニ」、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」、「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方 」、編著書に「戦後のオペラ」、「バロック・オペラ」、「オペラガイド」、訳書に「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」などがある。


