小井土文哉はイタリア・イモラ音楽院の名教師ボリス・ペトルシャンスキーのもとで研鑽を積みつつ国内外で活躍を続けるピアニスト。本盤は、作品の構造、内容を丁寧に聴き手へと届ける演奏で魅了してきた彼の持ち味が発揮されたものとなっている。とりわけ注目なのがスクリャービンのソナタ第3番。この作曲家は小井土にとっては重要なレパートリーである。音色の多彩さとスケールの大きさ、楽曲への理解度と演奏時の集中力の高さによって、作品に散りばめられた様々な仕掛けを鮮やかに浮かび上がらせている。シューマンでの物語性を感じる演奏も魅力的だ。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2025年8月号より)
【information】
SACD+DVD『高崎芸術劇場 大友直人 Presents T-Shotシリーズvol.15 小井土文哉 IN CONCERT』
フランク(バウアー編):前奏曲 フーガと変奏曲/フォーレ:ノクターン第6番/スクリャービン:ピアノ・ソナタ第3番/シューマン:ピアノ・ソナタ第1番 他
小井土文哉(ピアノ)
オクタヴィア・レコード
OVCX-00103 ¥3630(税込)

長井進之介 Shinnosuke Nagai
国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
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