阪哲朗らが挑むプッチーニ未完の大作 ~びわ湖ホール プロデュースオペラ《トゥーランドット》制作発表

 7月11日、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールが、来年3月に上演するプロデュースオペラ《トゥーランドット》の制作発表を実施。指揮を務める同ホール芸術監督・阪哲朗、演出の粟國淳、キャストの福井敬(カラフ役)らが出席した。

左より:村田和彦(びわ湖ホール館長)、阪哲朗、粟國淳、福井敬

 国内屈指のオペラ劇場であるびわ湖ホールが総力を挙げて制作する「プロデュースオペラ」。今年、日本で11年ぶりとなるコルンゴルト《死の都》舞台上演を行い大きな反響を呼んだ。2026年7月から改修に入るびわ湖ホールで、休館前最後の大型オペラ公演となる来年の演目は、プッチーニ未完の遺作《トゥーランドット》が選ばれた。〈誰も寝てはならぬ〉に代表される美しいアリアと、この作曲家ならではの色彩豊かな管弦楽が展開される本作。25年にわたりヨーロッパでキャリアを築き上げた阪にとっても、特に指揮回数の多い思い入れのある作品だという。

「今年のびわ湖ホールのテーマは“挑戦”ですが、トゥーランドット姫の出す謎に挑み続けるカラフの姿がその裏に込められています。この作品の、オリジナルのプロダクションで初期から携わるのは実はまだ2回目なので、根となる部分を粟國さんと一緒に創っていけることは非常に嬉しいです。
 今回はプロデュースオペラとしては初めてとなるキャストの公募オーディションを行い、実に227名もの応募がありました。さらに後日、合唱も公募します。休館前、最後の大きなオペラ公演になりますが、お客さんとしてインプットするだけでなく、出演者として舞台で歌ってアウトプットして、様々な形で劇場に関わっていただく機会を増やしたいという思いがあってのことです」

阪哲朗

 阪からの熱望を受けて演出に迎えられた粟國。2023年の新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室《ラ・ボエーム》で協働しており、その際の素晴らしさに感銘を受けてのことだという。びわ湖ホールでは、沼尻竜典・前芸術監督時代、2009年のプロデュースオペラ《トゥーランドット》公演でも演出を務めていたが、今回新制作として、阪とともに一からプロダクションを創り上げていく。

粟國「同じ劇場で同じ作品、ましてや《トゥーランドット》という大作で、異なる演出を考えるというのは、私にとって大きなチャレンジになると思います。残念ながら未完で終わってしまっている作品ですが、今回のテーマ“挑戦”のもとで、『フィナーレでプッチーニは何をやりたかったのか』を皆さんと紐解いて、何か新しいエッセンスをお客様にお届けできれば」

粟國淳

 ダブルキャストで2日間にわたって公演が行われる本プロダクション。カラフ役は宮里直樹(3/7)とともに、前回の《死の都》で難役・パウルを見事に歌いきった清水徹太郎(3/8)がキャスティングされていたが、病気療養のため降板することが発表された。代わって出演することとなった福井は、2009年プロデュースオペラでも同役を務めており、《トゥーランドット》が「携わったプロダクションの数が最も多い作品」だという。

福井「カラフという役は私にとって一番特別な存在ですが、演じる度に新たな“挑戦”があります。権力でも富でもなく、彼のキス一つでトゥーランドットの心が溶ける……極めてシンプルながら美しいドラマがこの作品の素晴らしさだと思いますので、今回お二人とどう創り上げていくか、楽しみにしています」

福井敬

 公演に先立ち東条碩夫(音楽評論家)による全2回の解説講座が行われるほか、本番2日目の上演前には、舞台装置を間近で見学しながら粟國らのトークを楽しめる「オペラ・ワークショップ」が開催される。休館を前に、イタリア・オペラの巨匠最後の傑作をどのように花開かせるのか、期待が高まる。

文:編集部
写真提供:びわ湖ホール


びわ湖ホール プロデュースオペラ
プッチーニ作曲 歌劇《トゥーランドット》
(全3幕/イタリア語上演・日本語字幕付)

2026.3/7(土)、3/8(日)各日14:00 びわ湖ホール
9/28(日)発売

指揮:阪哲朗(びわ湖ホール芸術監督)
演出:粟國淳
管弦楽:京都市交響楽団

出演(3/7、3/8)
トゥーランドット:谷明美、並河寿美
カラフ:宮里直樹、福井敬(※清水徹太郎より出演者変更)
ティムール:妻屋秀和、西田昂平**
リュー:吉川日奈子、船越亜弥*
アルトゥム:大野徹也、林誠
ピン:晴雅彦、迎肇聡*
パン:与儀巧、福西仁**
ポン:中井亮一、奥本凱哉**
役人:市川敏雅*(両日)
*びわ湖ホール声楽アンサンブル・ソロ登録メンバー **びわ湖ホール声楽アンサンブル

合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル 他
児童合唱:大津児童合唱団

問:びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136
https://www.biwako-hall.or.jp