山田和樹がバーミンガム市交響楽団 日本ツアー記者会見に登場
「明るくてポジティブ、夢のようなオーケストラです」

 今年6〜7月にかけ2年ぶりに来日するバーミンガム市交響楽団(以下CBSO)の記者会見がサントリーホール ブルーローズで行われ、同楽団の音楽監督である山田和樹が登壇した。
 CBSOはイギリスを代表するオーケストラの一つで2020年に創設100周年を迎えている。1980年には、当時25歳という若さのサイモン・ラトルを首席指揮者に任命し、その名を世界に広めた。その後もCBSOはサカリ・オラモやアンドリス・ネルソンスなど、若くして才能あふれる指揮者がシェフを務めており、山田は23年5月に首席指揮者に就任、現在は音楽監督となりその系譜に名を連ねている。

 会見で山田はCBSOについて、多くの時間を共有する家族のような存在と語った。
「長い時間をともに過ごすので、うまくいくときもあればそうでない時もありますが、メンバーたちは常に明るく、パワフルです。バーミンガム市が財政破綻してしまったので、現在市からの援助はない状態です。しかし、そんななかでも明るく、頑張ってやっていこうという空気感になっています。以前、計画していたツアーがキャンセルになってしまった際には、休むのではなく新しいファンを獲得すべく、無料イベントを一週間にわたって開催しました。私もトラムの中でピアノを弾いたり、ショッピングセンターでフルオーケストラを指揮したりもしました。うまくいかないことがあっても、それが“うまくいかない”という分類に入らない、そういうポジティブさが根底にあります。そんなオーケストラに『カズキの方がポジティブだ』と言われたりもします。CBSOは明るい音楽を提供してくれる夢のようなオーケストラで、音楽監督の僕は世界で一番幸せな指揮者だと思っています」

 今回の日本ツアーは、ベルリン・フィル定期公演(6/12〜6/14)へのデビュー直後の来日となり、全8公演を開催。
 プログラムにはショスタコーヴィチの祝典序曲、ムソルグスキーの展覧会の絵、チャイコフスキーの交響曲第5番などが予定されている。
「『展覧会の絵』はBBCプロムスの創始者としても知られる、ヘンリー・ウッドによる編曲版を演奏します。ラヴェルの編曲が有名ですが、ヘンリー・ウッド版はそれよりも前に編曲されていて、ラヴェルもこの版を参考にしたのではと想像します。ちなみにラヴェル版はまだ指揮をしたことがありません。
 チャイコフスキーの交響曲第5番は7、8年ぶりの演奏となります。しばらく指揮していなかったのは、小林研一郎先生の大得意のレパートリーだからです。先生は優しさと人間的な大きさと愛情を持っている方。おそれ多いと思っていたのですが、CBSOとであればと思い、今回勇気を持って選曲しました」

 ソリスト陣は、ロイヤルウエディングでの演奏が世界で話題となったチェリストのシェク・カネー=メイソン、日本を代表するピアニストの河村尚子、そして絶大な人気を誇るイム・ユンチャン(ピアノ)の3名。シェク・カネー=メイソンについて山田は「イギリスでとても有名な方。何と言っても素直な心で音楽に向き合っていて、得も言われぬほどの柔らかい音を持っている素晴らしい音楽家です」と初共演時の印象を語った。

 CBSOとの今後については、
「バーミンガム市交響楽団は、音楽、人すべてが明るい。この明るさをもった人たちが集ったら世界は平和になると思っています。オーケストラは社会の縮図なので、この“ポジティブさ”を世界に伝えていきたいです」と述べた。

 東京・京都の4公演は、音楽文化の普及と発展のため若い音楽家への支援を続けているローム ミュージック ファンデーション(RMF)と山田が立ち上げた「RMF&山田和樹 グローバル プロジェクト」の一環として行われ、公演当日25歳までの学生はS席チケットを特別価格で購入できる「RMFシート」が発売される。
 その他、山田和樹指揮・CBSOによるドイツ・グラモフォンとの録音プロジェクトが進行していることも発表された。
文・写真:編集部

【Information】
山田和樹指揮 バーミンガム市交響楽団
6/30(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
ショスタコーヴィチ:祝典序曲 イ長調 op.96
エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 op.85[チェロ:シェク・カネー=メイソン]
ムソルグスキー(ヘンリー・ウッド編):組曲「展覧会の絵」

7/1(火) 19:00 サントリーホール
ラヴェル:ラ・ヴァルス
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 op.18[ピアノ:河村尚子]
チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 op.64

7/2(水) 19:00 サントリーホール
ショスタコーヴィチ:祝典序曲 イ長調 op.96
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第4番 ト短調 op.40[ピアノ:イム・ユンチャン]
ムソルグスキー(ヘンリー・ウッド編):組曲「展覧会の絵」

7/5(土)15:00 ロームシアター京都 メインホール
ショスタコーヴィチ:祝典序曲 イ長調 op.96
エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 op.85[チェロ:シェク・カネー=メイソン]
ムソルグスキー(ヘンリー・ウッド編):組曲「展覧会の絵」

問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp

他公演
6/28(土)15:00 愛知県芸術劇場コンサートホール(CBCテレビ事業部052-241-8118)
6/29(日)14:00 兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)
7/4(金)19:00 アクロス福岡シンフォニーホール(092-725-9112)
7/6(日)14:00 横浜みなとみらいホール(神奈川芸術協会045-453-5080)