ピアニストの鈴木愛美は、2023年に第47回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、第92回日本音楽コンクール第1位を受賞。そして24年11月には第12回浜松国際ピアノコンクールで日本人および女性初の第1位となり、大いに話題を集めている。いま一番ホットなピアニストといっても過言ではない彼女が、2月、横須賀芸術劇場の「フレッシュ・アーティスツ from ヨコスカ シリーズ」にオール・シューベルト・プログラムで出演する。そのなかには浜松でも演奏したピアノ・ソナタ第18番「幻想」も並ぶ。
「3、4年ほど前からシューベルトの音楽の世界に魅了されるようになりました。いま一番好きな作曲家ですね。『幻想』は一昨年から勉強をはじめたのですが、弾けば弾くほど和声の配置の完璧さや旋律の美しさ、そして人間の感情のもっとも深い部分を描き出したような短調の響きなど、様々な要素に惹きこまれていく感覚があります。第9番のソナタはリーリャ・ジルベルシュテインの演奏を聴いて大好きになった曲で、初披露となります。後期とはまた違った世界観があるので、それをどのように届けられるか、いま模索しているところです」
鈴木は今回の浜松国際において、聴衆賞と室内楽賞も獲得。モーツァルトのピアノ四重奏曲第2番を演奏し、弦楽器群との洗練されたやりとり、多彩な音色で魅了した。
「室内楽は大学の授業で学びましたが、演奏機会は決して多くありませんでした。とくに今回のような大きな場となると初めてです。弦楽器のみなさまの演奏とお人柄が本当に素晴らしくて…たくさん助けていただきながら、本番では一番楽しく演奏することができました。今回は第2番を選曲しましたが、いつか第1番と第2番、両方を演奏会でやりたいねという話をしていたので、将来実現したいです!」
現在は東京音楽大学大学院の修士課程1年で学ぶ鈴木。今後についてはどのように考えているのだろうか。
「いまはシューベルトやベートーヴェンなど、ドイツ語圏の作曲家の作品に強い共感を覚えていることもあり、大学院を修了したらドイツで学びたいという想いがあります。ただ、もちろん独墺系ということにこだわってはいませんし、色々な国のレパートリーに取り組んでみたいです。また室内楽の機会も増やしていきたいですね」
才能と感性が成長し続けている鈴木による今回のリサイタルは、彼女の想いやピアニズムの“いま”を存分に感じることができるものとなるだろう。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2025年2月号より)
フレッシュ・アーティスツ from ヨコスカ シリーズ66
鈴木愛美 ピアノ・リサイタル
2025.2/16(日)14:00 ヨコスカ・ベイサイド・ポケット(完売)
問:横須賀芸術劇場 046-823-9999
https://www.yokosuka-arts.or.jp