“ダブル”の快感
プログラムは2曲。デュティユーとブラームス、交響曲第2番が2つ。つまりダブル。さらに前者の副題は「ル・ドゥーブル」、すなわち“ダブル”という意味のフランス語。この“ダブりだらけ”の演奏会を指揮するのは、ベルトラン・ダ・ブルならぬ、ベルトラン・ド・ビリー。この指揮者らしい、ユーモアと几帳面さの両面が見える、二重性のあるプログラムだ。
デュティユーは1916年生まれ、97歳まで長命して2013年に没したフランスの作曲家で、ドビュッシーやラヴェルなど近代フランスの伝統を受け継ぐ、色彩的で華麗なオーケストレーションに特色がある。1959年にシャルル・ミュンシュ指揮のボストン響が初演した「ル・ドゥーブル」は、オーケストラのなかにもう一つ小さなオーケストラが作られ、その二つが対話することで大と小を対比させるという、二重性をきわめる傑作。
都響には初登場のド・ビリーはパリ生まれのフランス人だが、ウィーン放送響やウィーン国立歌劇場など、長くウィーンを拠点に活躍してきた。パリの粋とウィーンの艶、優れたセンスで両者を融合し、生き生きとした音楽を聴かせることに定評がある。その彼が、パリに暮らしたデュティユーとウィーンを愛したブラームス、両者の交響曲第2番を組みあわせる。それは、ド・ビリー自身の人生の二重性を示しているのかもしれない。これはいわば、彼の名刺のようなプログラムなのではないか。“ダブルの快感”、じつに面白そう。
文:山崎浩太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年5月号から)
第788回 定期演奏会 Aシリーズ
5/13(水)19:00 東京文化会館
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp