巨匠トン・コープマン(チェンバロ/オルガン)の至芸で聴く豊穣のバロック鍵盤音楽

©François Berthier

 トン・コープマンは齢80を迎えた今年も、6月のライプツィヒのバッハ音楽祭に出演し、自身のアムステルダム・バロック管弦楽団や特別編成のバッハ合唱団を指揮して縦横無尽の活躍ぶり。このように指揮者としての顔を持つが、もともとチェンバロ・オルガンの奇才と言われた人だ。幼い頃から教会でオルガンを弾き、チェンバロは学生時代にブルージュの国際チェンバロ・コンクールの通奏低音部門で優勝。双方で精力的に演奏会を行ない、膨大な録音がある。

 そんなコープマンがこの11月に、全国4ヵ所で鍵盤楽器のコンサートを行なう。すみだトリフォニーホールではチェンバロとオルガン、芦屋ルナ・ホールと高崎芸術劇場ではチェンバロ、広島のセシリアホールではオルガン。いずれも、該博な音楽学の知識を持ちつつ、常に聴き手を楽しませたいと願うコープマンらしく、初期バロックの名品に盛期バロックの人気曲などを取り合わせて各楽器の魅力が存分に味わえるプログラムになっている。たとえばチェンバロでは「調子のよい鍛冶屋」の変奏曲で知られるヘンデルの組曲第5番、オルガンではJ.S.バッハの傑作「前奏曲とフーガ ハ短調」 BWV546など。各ホールのパイプオルガンやクルスベルヘン製作ルッカース・モデルのチェンバロ(鈴木雅明氏所有)の音色も聴きどころ。生来の躍動感と愉悦に齢を重ねた深みを加えた、今のコープマンが奏でるバロック鍵盤音楽の神髄に触れるまたとない機会となるだろう。
文:那須田 務
(ぶらあぼ2024年11月号より)

トン・コープマン(チェンバロ/オルガン) リサイタル
2024.11/9(土)15:00 すみだトリフォニーホール
問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 
https://www.triphony.com
11/13(水)19:00 ルネサンスクラシックス 芦屋ルナ・ホール
11/14(木)18:45 広島/エリザベト音楽大学セシリアホール
問:ムジカキアラ03-6431-8186 
https://www.musicachiara.com
11/16(土)14:00 高崎芸術劇場 音楽ホール
問:高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900
https://www.takasaki-foundation.or.jp/theatre/
※公演によりプログラムは異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。