佐渡裕&新日本フィルの「第九」――成熟を深める力強いタクトが感動を呼び起こす

 佐渡裕が新日本フィルと第九を初共演したのは1992年。以来佐渡は、93年、94年、99年、2000年、02年、03年、22年、23年と9度にわたり指揮をしてきた。今年は節目の10度目の登場となる。

 佐渡にとってベートーヴェンの第九は、1999年に初めて「1万人の第九」を指揮し想像をはるかに超える作品の可能性を体験して以来、特別なレパートリーとなったにちがいない。その後も東日本大震災やコロナ禍など未曾有の危機に直面した時には、第九を通して人々の心に寄り添い、人と人との絆を深めるシラーの歌詞とベートーヴェンの音楽が持つ力を伝えてきた。

左上より:佐渡 裕 ©Takashi Iijima/高野百合絵 ©Takayuki Abe/谷口睦美
林 眞暎 ©T.Tairadate/笛田博昭/平野 和 ©武藤 章

 佐渡のベートーヴェンは真摯に作品と向き合う王道を行く演奏であり、スケールが大きい。細部まで丁寧に描きながら歌うべきところはたっぷりと歌う。今回も「世界中の人々よ、抱き合え」と歌い上げる最後は聴く者に大きな感動をもたらすことだろう。

 ソリストの高野百合絵(ソプラノ)、谷口睦美(メゾソプラノ)、笛田博昭(テノール)、平野和(バリトン)は、佐渡がオペラなどで長年にわたり共演を重ね、直前の「1万人の第九」でも同じステージに立つ盟友である。林眞暎(12/19のみ出演)は国内外で活躍中の気鋭のメゾソプラノ。栗友会合唱団は3年連続の共演であり、佐渡にとって頼もしい存在。

 23年4月の音楽監督就任以来、お互いの信頼を深めている佐渡と新日本フィルによる第九は、今年を締めくくるにふさわしい、記憶に残るコンサートとなるに違いない。なお、14日のサントリーホール公演では前半に梅干野安未(ほやのあみ)のオルガン演奏がある。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2024年11月号より)

佐渡 裕(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団 「第九」特別演奏会2024
2024.12/14(土)14:00 サントリーホール 
12/15(日)14:00 すみだトリフォニーホール
12/19(木)19:00、12/22(日)18:00 東京オペラシティ コンサートホール
12/20(金)19:00 横浜みなとみらいホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
https://www.njp.or.jp

他公演 
2024.12/13(金) 水戸市民会館 グロービスホール(029-350-6060)