日本のオペラ界を担う3人の歌手によるユニットのアルバム第2弾は歌謡ポップスの名曲集。それぞれの声の個性を活かしながら歌い継ぐスタイルが基本だが、アンサンブルの美しさを際立たせるアレンジの妙に聴き惚れた。特に宮沢賢治の「星めぐりの歌」や谷村新司の「昴」、松田聖子が創唱した「瑠璃色の地球」といった壮大な宇宙の広がりを想わせる曲のファンタジックなスケールが素晴らしい。夜の浜辺で“若大将”がギター片手に歌うイメージの「君といつまでも」(台詞入り)もナポリ民謡のようで素敵だ。締めの「上を向いて歩こう」の合唱からは昭和の若者の息吹を感じた。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2024年9月号より)
【information】
CD『日本のうた/カントキューブ』
宮沢賢治:星めぐりの歌/武満徹:めぐり逢い/村井邦彦:翼をください/弾厚作:君といつまでも/谷村新司:昴/平井夏美:瑠璃色の地球/中村八大:上を向いて歩こう(以上廣瀬充編) 他
カントキューブ
【隠岐速人(テノール) 高橋洋介(バリトン) 後藤春馬(バスバリトン)】
木村裕平 廣瀬充(以上ピアノ)
キングレコード
KICC-1617 ¥3300(税込)