1973年にオープンした神戸文化ホールが、開館50周年記念事業のひとつとして今年12月、ヴェルディ作曲のオペラ《ファルスタッフ》を上演する。8月13日、神戸市内で記者会見が行われ、神戸市混声合唱団の音楽監督で本公演の指揮を務める佐藤正浩、演出家の岩田達宗、タイトルロールを歌う黒田博らが出席した。
神戸市はプロの合唱団・管弦楽団(神戸市室内管)の両方をもつが、これは全国的にみても珍しい。今回はそれぞれが合唱、管弦楽を担うだけでなく、キャストにも合唱団の現役メンバーおよびOGを配置。両団体の総力を結集した企画といえる。
新国立劇場オペラ研修所所長を務めるなど、オペラ指揮者としても長く活躍する佐藤。《ファルスタッフ》は「神戸市混声合唱団の強みが発揮される演目」と意気込む。
「4年前に私が音楽監督に就任した時は、ヨーロッパの伝統的な合唱曲や日本人作品をレパートリーの中心に据えた、世界に通用する合唱団に育てたいと考えていて、オペラに取り組むつもりはありませんでした。
しかし、活動していくうちに団員のオペラに対する見識や能力の高さを感じるようになり、そして今回、私たちが本拠地とする神戸文化ホールの開館50周年記念ということもあって挑戦することにしました。
《ファルスタッフ》はアンサンブル・オペラなので、お互いのことをよく知っている者同士で上演できることは我々の強みだと思います。互いに意見を言い合いながら良い音楽を作りたいです」
神戸市出身の岩田は《ファルスタッフ》の見どころを語った。
「この作品は簡単に言うと女性が男性をやっつける話。打ち負かすのではなく、対立を乗り越えるという意味を持っています。
ヴェルディが書いたオペラのうち、そのほとんどが男性中心の社会の理不尽さによって女性が不幸になる、あるいは死んでしまう内容ですが、彼は人生最後にこのオペラを書きました。
今、世界中で戦争が続いています。我々の日常生活にもたくさんの対立やいがみ合いが存在しますが、それを乗り越えるものは何か。ヴェルディの答えがこのオペラに込められていると思います。
神戸の街から、対立を乗り越え、本当に平和な世界を知るためにできることを発信していきたいです」
キャストは合唱団の現役メンバーやOGが中心のなか、客演の黒田には大きな期待が寄せられる。
「この作品はヴェルディ最後の大傑作で、物語に心が巻き込まれていく感覚があります。ファルスタッフは、『自分の欲望を叶えて何が悪いんだ』、と非常に自己中心的で動物的に生きている人物。しかし、その裏側にある悲しさや苦しさも表現したい。オペラを観た後、ただ楽しかったというだけではなく、何かもう一つお土産を持って帰ってもらえるような作品にしたいです」
公演に先立ち、カヴァーキャスト(神戸市混声合唱団・現役メンバー)によるプレコンサート(11/3)やバックステージツアー(12/20)、解説講座(10/9,11/7)なども開催される。
【Information】
神戸文化ホール開館50周年記念事業
ヴェルディ:オペラ《ファルスタッフ》全3幕(イタリア語上演・日本語字幕付)
2024.12/21(土)14:00 神戸文化ホール ※8/23(金)発売
指揮:佐藤正浩
演出:岩田達宗
合唱:神戸市混声合唱団
管弦楽:神戸市室内管弦楽団
ファルスタッフ:黒田博
フォード:西尾岳史
フェントン:小堀勇介
カイウス:谷口文敏
バルドルフォ:福西仁
ピストーラ:松森治
アリーチェ:老田裕子
クイックリー夫人:福原寿美枝
ナンネッタ:内藤里美
メグ:山田愛子
問:神戸文化ホールプレイガイド078-351-3349
https://www.kobe-bunka.jp/hall/50th/event/789/