NHK交響楽団クラリネット首席の伊藤圭が魅力的な小品集をリリースした。伊藤の音は深々とした美音であり、旋律の歌い回しにも実に味わいがある。バルトーク「3つのチーク地方の民謡」は単純な構成から細やかな情感が伝わってくる。ラヴェル「ハバネラ形式の小品」は切り立ったリズムから異国情緒がこぼれ落ちる。ラフマニノフのチェロ・ソナタのアンダンテは、美しい。チェロとは違った味があり、榊原紀保子のピアノもとてもきれい。うっとりとなる。ヴィドール「序奏とロンド」では、序奏の奥行きのある響きとロンドの躍動感、そして軽々とこなす技巧的なパッセージの数々。全く見事な出来栄えだ。
文:横原千史
(ぶらあぼ2024年5月号より)
【information】
CD『ビリーフ クラリネット小品集/伊藤圭』
ヴィドール:序奏とロンド/ラヴェル:ハバネラ形式の小品/バルトーク:3つのチーク地方の民謡/ラフマニノフ:チェロ・ソナタより第3楽章/ピアソラ:アヴェ・マリア「タンティ・アンニ・プリマ」/ヘス:映画『ラベンダーの咲く庭で』よりテーマ 他
伊藤圭(クラリネット)
榊原紀保子(ピアノ)
録音研究室(レック・ラボ)
NIKU-9059 ¥3080(税込)