近藤譲が第55回サントリー音楽賞を受賞

投稿日 2024年3月28日
著者 t-matsumoto
カテゴリー NEWS

第23回佐治敬三賞は、安野太郎ゾンビ音楽『大霊廟IV―音楽崩壊―』

　作曲家の近藤譲（こんどうじょう）が、第55回（2023年度）サントリー音楽賞を受賞した。同賞は、公益財団法人サントリー芸術財団（代表理事：堤剛、鳥井信吾）が、日本における洋楽の発展に顕著な業績をあげた個人または団体を顕彰し、贈呈している。賞金は700万円。

　近藤は1947年東京生まれ。東京藝術大学卒業。ロックフェラー3世財団のフェローとしてニューヨークに、ブリティッシュ・カウンシル・シニア・フェローとしてロンドンに滞在した。米国イーストマン音楽院では特別客員教授も務めた。さらに、ハーヴァード大学をはじめとした欧米の多くの大学に招かれ講演を行っている。国内においては、エリザベト音楽大学、お茶の水女子大学・大学院教授として、また、母校の東京藝術大学でも長年教鞭をとり、現在、昭和音楽大学教授、お茶の水女子大学名誉教授。日本現代音楽協会理事長も務める。
　フィレンツェ五月音楽祭やタングルウッド音楽祭など多くの国際音楽祭において自作の特集が組まれており、海外で最も著名な日本の作曲家のひとり。国内でもサントリー音楽財団（現・サントリー芸術財団）主催によるオーケストラ作品個展（2004）、東京オペラシティ文化財団主催「コンポージアム」のオーケストラ作品個展「近藤譲の音楽」（2023）などが開催。
　1970年代前半に発表した「線の音楽」という独自の作曲方法、音楽の捉え方は次世代の作曲家たちにも大きな影響を与えており、音楽の聴取のあり方を世に問うものでもあった。180曲近くにのぼる作品のほとんどが英国ヨーク大学出版（UYMP）から出版されている。
　執筆活動も活発に展開し、『ものがたり西洋音楽史』では毎日出版文化賞特別賞（2020年）を受賞。翻訳においても、J.ケージ著『音楽の零度』等の著作がある。
　これまでに、日本音楽コンクール作曲部門、芥川作曲賞（現・芥川也寸志サントリー作曲賞）、ハダースフィールド国際作曲コンクール（英国）、武満徹作曲賞等の作曲コンクールの審査員、京都賞音楽部門選考委員なども務めた。
　1991年尾高賞、2005年中島健蔵音楽賞、2018年には芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。2012年にはアメリカ芸術・文学アカデミー外国人名誉会員（終身）に選出された。

　一方、日本国内で実施された音楽を主体とする公演の中から、チャレンジ精神に満ちた企画で、かつ公演成果の高い優れた公演に贈られる「佐治敬三賞」も同日に発表された。第23回（2023年度）は、「サウンドパフォーマンス・プラットフォーム特別公演安野太郎ゾンビ音楽『大霊廟IV—音楽崩壊—』」（23.10/14、10/15 主催：愛知県芸術劇場）が選出された。賞金は200万円。

※ゾンビ音楽：安野太郎が発明した、リコーダーを演奏する自動演奏機械による音楽。機械の演奏であるため、人間の演奏のように音を合わせようとする意思が無い。ゆえに独特のゆらぎがある音響が生まれる。大霊廟シリーズにおいては、機械が指を動かす装置に加え、人間がふいごを踏んで楽器に空気をおくる装置が備えられるようになった。人間が機械のために奉仕するこの構図に安野は様々なテーマを投影してきた。
（沼野雄司委員）

　また、第34回（2023年度）芥川也寸志サントリー作曲賞のノミネート3作品もあわせて発表された。同賞は、戦後のわが国を代表する作曲家・芥川也寸志（1925～89年）の功績を記念し、サントリー音楽財団が創設。第34回は、2023年1月1日から同年の12月31日までの間に国内外で初演された日本人作曲家の管弦楽作品が対象で、譜面と初演録音による選考を経て、ノミネート作品が選定された。選考委員は、新実徳英、望月京、山本裕之の3名。選考演奏会は今年8月にサントリーホールで行われる。

第34回芥川也寸志サントリー作曲賞ノミネート作品
石川健人：「ブリコラ-じゅげむ」［2023］
初演＝2023.6/16
東京藝術大学第6ホール

河島昌史：『e→e IV』［2022］
初演＝2023.2/10
ドンボスコバーゼル、パウルザッハーザール

山邊光二：『Underscore』［2022］
初演＝2023.5/28
東京オペラシティコンサートホール