既出の第3番とともに23年のフェスタサマーミューザ KAWASAKIで披露された、ノットには珍しいチャイコフスキー演奏の記録。むろんこれは、ロシア情趣に富んだ激情的な演奏ではなく、新しい視点で紡がれる革新的な音楽である。第1楽章は普段隠れがちな弦楽器の動き等が瑞々しく響き、第2楽章は感傷的な歌ではなく誠心な音の綾、第3楽章は前進するスケルツォ、第4楽章はマーラーにも通じる白熱の器楽音楽だ。しかもクールな表現とは違って、普遍的な熱気や高揚感を湛えている点がノットらしいところ。ともかく同作曲家の音楽を見直させる1枚であるのは間違いない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年4月号より)
【information】
SACD『チャイコフスキー:交響曲第4番 /ジョナサン・ノット&東響』
チャイコフスキー:交響曲第4番
ジョナサン・ノット(指揮)
東京交響楽団
収録:2023年7月、ミューザ川崎シンフォニーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00838 ¥3850(税込)