井上道義が21~22年に3つの楽団を振ってライブ録音した(些か珍しい)ブラームス全集。ここでは、強固な既成概念を排して、すべての音楽をじっくりと構築しながら各曲の特質をストレートに伝える、真の正攻法ともいうべき演奏が展開されている。京響の持ち味を生かした豊麗・芳醇な1番はとりわけ新鮮で、表情豊かな第2楽章は特に聴きもの。同曲に限らず緩徐楽章のしなやかな美しさが大きな魅力ともなっている。このほか、いかめしい(?)1、3番が2番と同様の雰囲気を湛えている点、4番の濃厚さや細部の鮮やかさなど、興味深い要素が満載されている。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年4月号より)
【information】
SACD『ブラームス:交響曲全集 /井上道義&京響、新日本フィル、広響』
ブラームス:交響曲第1番〜第4番
井上道義(指揮)
京都市交響楽団
新日本フィルハーモニー交響楽団
広島交響楽団
収録:2021年3月、東海市芸術劇場 他(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00772(2枚組) ¥7700(税込)