【CD】チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」/ジョナサン・ノット&東響

 まず、青澤隆明氏執筆の大部に及ぶ解説が圧巻だ。これぞフィジカルCDの醍醐味。今や黄金コンビのノットと東響、チャイコフスキー交響曲初録音は意表をついて第3番。6曲の中では人気が低いが、こんなに魅力的な曲だったとは。他の5曲とは異なる、「終楽章クライマックス」ではない5楽章構成の、細部の美が輝く。各声部がよく対話する。両翼配置も効果的で、多く含まれる対位法的局面が生きる。豊かに充実した瞬間瞬間の積み重ねが自然にドラマを高揚させてゆく。ノットはこの曲をマーラーの7番と比較しているが、「19世紀の新古典主義的大交響曲」としての再評価を促す演奏だ。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2024年3月号より)

【information】
CD『チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」/ジョナサン・ノット&東響』

チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」

ジョナサン・ノット(指揮)
東京交響楽団

収録:2023年7月、ミューザ川崎シンフォニーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00835 ¥3850(税込)