トップスターたちが舞う贅沢なラインナップ
2012年まで毎年、年末年始に来日公演を行ってきたレニングラード国立バレエが現地での正式名称の「ミハイロフスキー劇場バレエ」と名を改め、今回3年ぶりに待望の再来日を果たす。前回の公演から3年の間に、現代を代表する振付家のひとりであるナチョ・ドゥアトが芸術監督に就任、その後レジデンス・コレオグラファーとして団を牽引、ダンサーたちは新たな作品に挑戦するなかで、より一層のテクニックとセンスを磨いてきた。そんな「ミハイロフスキー劇場バレエ」の今が感じられる公演とあって、いやが上にも期待が高まる。
注目は、同バレエ団の芸術顧問であるファルフ・ルジマトフが久々に全幕主演すること。自身が改訂演出した『海賊』で海賊の長、コンラッドを演じる。ルジマトフといえば奴隷アリ役が十八番だが、現在のルジマトフには勇猛果敢なリーダーであるコンラッドがよく似合う。場を圧倒するカリスマ性をしかと目に焼き付けたい。奴隷アリを踊るのは2011年にマリインスキー・バレエから移籍したレオニード・サラファーノフ。抜群の敏捷性と鍛え抜かれた美しいラインはアリにぴったり。ルジマトフとともに卓越した舞台を創ってくれることだろう。サラファーノフは今回『ジゼル』と『白鳥の湖』にも出演と大活躍。今やこのバレエ団になくてはならない存在となっている。またもうひとり、3演目全幕すべてに出演するヴィクトル・レベデフにも注目したい。10年にワガノワ・バレエ・アカデミーをトップで卒業後、主要な役を次々に踊り、今年6月プリンシパルに昇進した期待のホープだ。人懐こい笑顔で、優美な身体のラインと厳格なテクニックを持ち、マナーのよい踊りが特長。次の時代を担うダンサーのひとりだ。『白鳥の湖』にはデニス・マトヴィエンコ(マリインスキー・バレエ プリンシパル)がゲスト出演。こちらも話題だ。
女性では不動のプリマ、イリーナ・ペレンとエカテリーナ・ボルチェンコはもちろんのこと、ボリショイ・バレエから移籍したアンジェリーナ・ヴォロンツォーワの活躍も楽しみだ。
『新春スペシャル・ガラ』では、吉田都とデニス・マトヴィエンコのゲスト組が『ライモンダ』を踊る。第3幕ライモンダの結婚式のシーンをカットなし、舞台セットとコール・ド付きでまるごと上演する贅沢な内容だ。ほか、『くるみ割り人形』より第2幕〜おとぎの国〜、『白鳥の湖』より第2幕〜オデットと王子、湖畔の出会い〜も上演。新春にふさわしい豪華なラインナップとなっている。
綺羅星のごとき主役級のダンサーはもちろん素晴らしいが、同バレエ団は群舞の美しさも際立ったものがあり、どこをとっても格調あるロシア・バレエの優美なスタイルが体現されているのが特徴。まさにクラシックバレエの王道ともいうべき踊りで、古典の上演にはうってつけといえる。古典の名作の数々を最高峰の踊りで堪能できる公演である。2015年の“バレエ鑑賞初め”に、ぜひ足を運んでほしい。
文:石村紀子
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)
『新春スペシャル・ガラ』
2015/1/3(土)、1/4(日)各14:00 東京国際フォーラム ホールA
『ジゼル』
2015/1/6(火)、1/7(水)各19:00 東京文化会館
『海賊』
2015/1/8(木)、1/9(金)各19:00 東京文化会館
『白鳥の湖』
2015/1/10(土)15:00、1/11(日)14:00 東京国際フォーラム ホールA
2015/1/12(月・祝)15:00 神奈川県民ホール
問:光藍社チケットセンター050-3776-6184
http://www.koransha.com