Yuri Temirkanov 1938-2023
20世紀ロシアを代表する指揮者のひとり、ユーリ・テミルカーノフが11月2日、サンクトペテルブルク市内の病院で死去した 。享年84。
旧ソ連時代のコーカサス地方に生まれる。9歳から音楽を学び始め、13歳でサンクトペテルブルク音楽院(旧レニングラード音楽院)に入学。卒業後、サンクトペテルブルク・フィル(旧レニングラード・フィル)でムラヴィンスキーのアシスタントを務める。1968年から同オーケストラの首席指揮者、88年には音楽監督に就任し、現在に至るまで同オーケストラを代表する指揮者として活躍してきた。他にも76~88年、マリインスキー歌劇場の芸術監督及び首席指揮者を務めるなどロシア音楽界を牽引し続けた。
90年代に入ると国外にも活動の場を広げ、ロイヤル・フィル首席指揮者、ドレスデン・フィル首席客演指揮者、ボルティモア響音楽監督など世界各国で要職を務めた。他にもウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、ロンドン響、シカゴ響など、名だたるオーケストラに客演している。
1972年に初来日。サンクトペテルブルク・フィルとは1989年に日本ツアーを行う。2008年には、彼の70歳を記念して開催された「チャイコフスキー・フェスティヴァル」に同楽団と出演。チャイコフスキーの連続演奏会を行った。2000年に読売日本交響楽団に初登場し、2015年から同オーケストラの名誉指揮者を務めている。また、ヴァイオリニストの庄司紗矢香とも親交を持つ。
ロシアの巨匠らしくショスタコーヴィチ、チャイコフスキー、プロコフィエフなどの同国の作品を得意とし、指揮棒を持たない優雅な指揮姿ながら、スケールが大きく強烈なエネルギーを伴った音楽作りで聴衆を魅了した。
最後の来日公演となった2019年の読響の定期演奏会で披露したショスタコーヴィチの交響曲第13番「バビ・ヤール」は、圧巻の名演として絶賛された。2015年には旭日中綬章を受章している。