タンゴ・ミュージカル『シャンテクレール』 〜ブエノスアイレス 愛と欲望の夜〜

ドラマティックな大人のタンゴ

 モーラ・ゴドイの名を聞いて胸が高鳴る人も多いだろう。アルゼンチン、ブエノスアイレス州出身のトップダンサーだ。抜群のプロポーションと美貌に恵まれ、クラシック・バレエ、ジャズダンスを経てタンゴの世界に入る。転機は、自ら振付・主演したタンゴ・ミュージカル『タンゲーラ』の世界的大ヒット。ダンサー・振付家として国際的なスターへの飛躍を遂げ、2002年にはベスト・ミュージカル賞を受賞。作品は2008、9年に日本でも上演されて話題を呼んだ。
 「シャンテクレール」とは、かつてブエノスアイレスに実在し、隆盛を誇ったキャバレーの名だ。幕が上がるとそこは街角。老警備員が見上げる古びた建物が、突然ライトを浴び、半世紀以上も昔のにぎわいがよみがえる。忙しく動き回るウェイターやウェイトレス、あやしげな取引やカードに興じる客たち、実らない恋や乱闘事件。その中でひときわ輝いているのは、花形ダンサーのリタナだ。すらりとした身体のラインを惜しげなく見せる衣裳をまとい、男たちと大胆に絡み、華麗なダンスを披露する。
 リタナを踊るのは、カンパニーのリーダーで、企画・振付を行ったモーラ自身。妖艶な視線と姿から、あでやかなオーラが立ちのぼる。バレエを知るモーラならではのダイナミックなダンスシーンは、本格的なタンゴの演奏と併せて見応え十分。ストーリー性を重視した展開や、過去と現在をつなぐ演出も効いている。確実に楽しめる逸品だ。
文:新藤弘子
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)

12/4(木)〜12/7(日) 東急シアターオーブ
問:チケットスペース03-3234-9999 
http://l-tike.com/tango14