バロックの名手が引き出す名曲の新たな魅力
バロック・チェロの名手として国際的に知られ、指揮者としては現在、神戸市室内管弦楽団の音楽監督を務める鈴木秀美が、新日本フィルの「すみだクラシックへの扉」に登場。メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」、シューベルトの交響曲第7番「未完成」、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」を指揮する。
近年、バロック音楽や古典派音楽、つまり“古楽”を手掛けてきた演奏家が、シューベルトやメンデルスゾーンなどの初期ロマン派の作品を演奏することが増え、それらの作品の真価がしばしば“再発見”されている。ピリオド楽器を使ったロマン派作品演奏が盛んになりつつある一方、モダン楽器のオーケストラでピリオド的(古楽的)なアプローチを取り入れて演奏する機会も珍しくなくなっている。鈴木もそういう流れを推進している指揮者の一人だ。「フィンガルの洞窟」も「田園」も、自然からインスピレーションを受けた、描写的なところのある音楽作品である。鈴木がそれらをどう描くのか、例えば「田園」の第4楽章の“嵐”をどう表現するのか、それらを想像するだけでも楽しくなる。
「すみだクラシックへの扉」は、クラシック・ビギナー向けのシリーズであり、「未完成」や「田園」は間違いなく名曲中の名曲であるが、聴き慣れた作品を今まで味わったことのないような新鮮さで聴かせてくれる鈴木の指揮は、ディープなクラシック・ファンにとっても興味津々である。
文:山田治生
(ぶらあぼ2023年10月号より)
すみだクラシックへの扉 第18回
2023.10/20(金)、10/21(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp