ヴィオラの重鎮、店村眞積が自らのリサイタルの後半に選んだのは、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番。たしかにヴィオラの魅力とアンサンブルの喜びを表現するには最高の一曲で、店村の音楽観がこの上なく反映された選曲だ。手練れたちが揃ったことで、枯れた味わいから攻めた表現まで、各々が名人芸を発揮しながら、全体はふくよかで柔らかい表情が維持されている。名匠たちによる各第2奏者の濃密な表現(殊にヴィオラ村上の凄み!)に乗って、大ベテランの各第1奏者は巧みで懐深い歌いまわしを披露。構えは大きいが細部まで行き届いた、ハーモニー豊かなブラームスに浸る。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年10月号より)
【information】
CD『ブラームス:弦楽六重奏曲第1番/ストリング・アンサンブルMT』
ブラームス:弦楽六重奏曲第1番、同第2番より第2楽章
ストリング・アンサンブルMT
【フェデリコ・アゴスティーニ 中村静香 (以上ヴァイオリン) 店村眞積 村上淳一郎(以上ヴィオラ) 上村昇 山本裕康(以上チェロ)】
収録:2022年11月、水戸芸術館コンサートホールATM(ライブ)
マイスター・ミュージック
MM-4521 ¥3520(税込)