広上淳一(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

盤石のソリスト陣によるヴェリズモ・オペラの傑作を演奏会形式で

 7月7日&8日の日本フィルハーモニー交響楽団(JPO)・第752回東京定期演奏会は、「フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)」の肩書を持つ広上淳一が、レオンカヴァッロの《道化師》を演奏会形式で上演する。2019年5月の第710回東京定期では、桂冠指揮者兼芸術顧問のアレクサンドル・ラザレフがマスカーニの《カヴァレリア・ルスティカーナ》の大爆演を同じく演奏会形式で成功させており、欧米の歌劇場で「Cav.&Pag.(カヴァパリ)」と呼ばれ、しばしば2本立てで上演されるイタリアのヴェリズモ(現実主義)オペラ2大傑作の輪がコロナ禍をはさんで完結する。

 広上は日本フィルや京都市交響楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢などのシェフを歴任。シンフォニー指揮者のイメージが強いが、海外でも若い時から歌劇場のピットで指揮、近年は宮崎国際音楽祭の最終日にイタリア歌劇の傑作を指揮するのが恒例となっている。オーケストラと合唱を駆り立て、ソリストと一体に燃焼する音楽に定評がある。レオンカヴァッロにはワーグナーに傾倒した一面もあり、「ヴェリズモ歌劇の伴奏」という言葉では言い尽くせないほど緻密なスコアが演奏会形式で再現されると、新たな発見もあるはずだ。

 ソリストは「強力」の一語に尽きる。カニオの笛田博昭、シルヴィオの池内響、トニオの上江隼人は23年5月の三河市民オペラ《アンドレア・シェニエ》(ジョルダーノ)でも強靭かつ劇的な歌唱で客席を圧倒。イタリアで頭角を現した竹多倫子のネッダ、ベルカントものの第一人者である小堀勇介のベッペに至るまで隙のないキャストといえる。
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2023年7月号より)

第752回 東京定期演奏会〈春季〉
2023.7/7(金)19:00、7/8(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://japanphil.or.jp