アンサンブル・ノマド 第78回定期演奏会

“息”づかいで感じる最先端の音楽シーン

(c)Maki Takagi

 一昨年行われた第73回定期ではストリングスにフォーカスし、現代の創作の最前線を紹介したアンサンブル・ノマド。6月1日に行われる第78回は、「プシュケー・息」と題したシリーズの第一弾として、「吹奏の風」をテーマに今度は管楽器に焦点を当てる。結成当初からノマドの看板奏者であったフルートの木ノ脇道元とクラリネットの菊地秀夫という二人の名手にゲスト奏者を加え、ヴァレーズ「オクタンドル」(1923)のような古典的吹奏楽から、2つの世界初演作まで幅広いプログラムを披露する。

 木ノ脇はクリストバル・ハルフター(アルフテル)「フルートと弦楽六重奏のための協奏曲」でソロを務める他、昨年、自身のリサイタルで菊地と共に初演した山下真美「5番の香水」を再演する。一方、菊地は一昨年、新作をメインとするソロ・アルバムをリリースした。星谷丈生の「刹那の慣習 I」はそのアルバムの表題作だが、今回、星谷は続編「刹那の慣習 IIe −時の分割について−」の世界初演を菊地に託す。

 才能を認められながら早世した江村哲二の晩年の作、オーボエ、クラリネット、ファゴットのトリオ「奇妙な誘惑」、ベテラン久木山直の「木管五重奏のための RAMO 枝」など、他にも興味深い作品が並ぶが、何と言っても目玉は藤倉大が2016年から翌年にかけて作曲した「チューバ協奏曲」の室内楽版世界初演だろう。縁の下の力持ちというイメージを覆し、チューバが官能的な旋律を朗々と奏でる。ソロは「低音デュオ」など新しい試みに意欲を燃やす橋本晋哉。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年6月号より)

2023.6/1(木)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:キーノート0422-44-1165 
https://www.ensemble-nomad.com