創設50周年の東京公演は輝けるフランス音楽
仙台フィルハーモニー管弦楽団は2023年、創設50周年を迎える。この記念年の6月1日にサントリーホールで開く東京公演「アイリスオーヤマクラシックスペシャル2023 パスカル・ヴェロ×仙台フィル」は、色彩豊かな音楽と躍動感で定評のある桂冠指揮者ヴェロによるフランス音楽のプログラム。ベルリオーズの「幻想交響曲」は「ヴェロさんが得意の作品。彼の想像力の豊かさが発揮される。第1楽章の出だしから香り立つような、休符でも何かをイメージさせ、感じさせる音づくりです」とコンサートマスターの神谷未穂は言う。
「フランス音楽をサントリーホールで演奏すると、響きに輝きと臨場感が出る」と仙台フィル副理事長の大山健太郎・アイリスオーヤマ会長は期待する。仙台市を代表する企業経営者の大山会長は「東京公演を当社の主催で毎年続ける」考えだが、「ベルリオーズの『幻想交響曲』はフランス音楽の中でも私が特に好きな、ワクワク感のある作品。私からヴェロさんに指揮をお願いした」と今年は格別の思いで臨んでいる。
フランス出身のヴェロは2006年から常任指揮者、18年から桂冠指揮者を務めている。「リハーサルは非常に厳しい反面、本番では団員の自主性を尊重してくれるところがヴェロさんの魅力」と神谷は語る。こうした積極性から仙台フィルの創意が放たれ、フランス音楽の輝かしい響きと推進力が生まれるようだ。
公演前半には、一般に演奏頻度が高いとは言えないフランス音楽の傑作を聴く貴重な機会も用意されている。プーランクの「演奏会用組曲『牝鹿』」と「オルガン、弦楽とティンパニのための協奏曲」である。
「牝鹿」はパリっ子プーランクのエスプリが冴える軽妙洒脱なバレエ音楽。きらびやかな管弦楽の色彩感が聴き手を魅了する。
一転して「オルガン協奏曲」はシリアスで深みのある作品だが、旋律は美しく親しみやすい。管楽器を使わず、オルガンと弦楽、ティンパニという珍しい編成。オルガン演奏は今井奈緒子。ティンパニは仙台フィルが誇る竹内将也。「竹内さんのティンパニ演奏にはここまでというリミットがない。彼の個性が生きる」と神谷は言う。パイプオルガンを擁するサントリーホールならではの独特の響きが期待できる。仙台フィルの曲目には、日本であまり演奏されてこなかった20世紀のフランス音楽の名曲を広く一般に届けようという意欲が表れている。
仙台フィルには片岡良和や芥川也寸志、外山雄三ら作曲家が常任指揮者や音楽監督として関わってきた。50周年の23年度は恩返しとして彼らの作品も演奏していく。「東日本大震災時も被災地を楽団員が回り、音楽を届けてきた」と神谷。この活動がアンサンブル能力の向上にも寄与してきた。
新拠点となる仙台市内の大ホールの建設も決まった。「仙台市は音楽の都、楽都を標榜しており、同市から支援もしていただいている。課題は若い人たちが楽しめるオーケストラにすること」と大山会長は抱負を語る。そのためにジュニアオーケストラの指導やキッズコンサートの開催を重視している。さらに「東京の人たちにも仙台フィルを楽しんでもらいたい」と話す。「東京にもしっかり足場を作り、それから海外も目指すステップだと思う。東京公演を機に仙台での演奏会にも来ていただきたい」と大山会長は願っている。
取材・文:池上輝彦
(ぶらあぼ2023年5月号より)
アイリスオーヤマクラシックスペシャル2023 パスカル・ヴェロ×仙台フィル
2023.6/1(木)19:00 サントリーホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
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