北九州市立響ホール 2023年度ラインナップの聴きどころ

開館30周年を彩る濃密で多彩なプログラム

 北九州市立響ホールが今年開館30周年を迎えた。同ホールは、残響時間1.8秒(満席時)という究極の音響を誇り、演奏家と聴衆からの支持も厚い。以下、記念イヤーとなる2023年度のラインナップをご紹介しよう。

 まずは7月の「響ホール開館30周年記念 ガラ・コンサート」。N響特別コンサートマスターの篠崎史紀やヴァイオリニストの南紫音といった北九州市出身の名手6名をはじめ、著名楽団の首席クラスがズラリと揃った豪華なメンバーが、二大弦楽セレナーデ等を披露する。これまさに“この日だけのスペシャルコンサート”だ。

 年間の大きな柱は、一流の演奏をたっぷりと味わえる「リサイタルシリーズ」。初回の6月には、世界的に活躍する小菅優(ピアノ)が、高度なテクニックと高い芸術性を披露する。7月の「ダニエル・オッテンザマー クラリネット・トリオ・アンソロジー」は、ウィーン・フィルの首席クラリネット奏者が、ベルリン・フィルのチェロ奏者、ウィーン国立音大教授のピアノ奏者と立ち上げたプロジェクト。トリオとしては本公演が日本デビューゆえに、幼馴染3人の息の合った演奏、創意に富んだプログラムを、いち早く満喫しよう。9月には上野耕平(サクソフォン)×三浦一馬(バンドネオン)×山中惇史(ピアノ)が情熱のステージを展開。若手トップ奏者による刺激的なセッションと新鮮なサウンドを体感したい。12月は石田組(弦楽アンサンブル)。人気ヴァイオリン奏者・石田泰尚と第一線の名手たちが、ライブ感あふれる演奏を繰り広げ、弦楽アンサンブルの新たな世界を拓く。明けて1月は樫本大進(ヴァイオリン)&エリック・ル・サージュ(ピアノ)。日仏の世界的ソリストの濃密な本格派デュオで、ブラームス等の名作を堪能できる。

 もう1つの柱は、平日お昼を気軽かつ贅沢に過ごせる45分間の「ワンコインコンサート」。5月は北九州市出身でタレイア・クァルテットでも活躍する二村裕美(ヴァイオリン)、7月は著名コンクールでの実績が光る瀧本実里(フルート)、9月はパリ在住の国際派・正戸里佳(ヴァイオリン)らによる「パリの散歩道」(1時間の特別公演)、1月はやはり北九州市出身で世界に羽ばたく梅﨑秀(ピアノ)と、期待の俊英たちが有名曲中心のプログラムを披露する。

 このほか、6月に「0才からの音楽会〜オーケストラとやみの女王〜」、12月に「0才からの親子で楽しむクラシックコンサート」を開催。いずれも工夫を凝らした内容と乳幼児への配慮が嬉しい貴重な公演だ。なお、秋には恒例の北九州国際音楽祭も行われる。

 国際色と地元色、本格感と親しみやすさを併せ持ったコンサートの数々に、こぞって足を運ぼう。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年5月号より)

問:響ホール音楽事業課093-663-6661 
https://www.hibiki-hall.jp
※各公演、発売日の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。