ゴールデンウィークの金沢を舞台に今年も「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」が開催される。
今回のテーマは「東欧に輝く音楽~プラハ・ウィーン・ブダペスト~」。豪華アーティスト陣が金沢に旋風を巻き起こす。
文:飯尾洋一
今年の音楽祭は4月28日から5月5日にかけて開催される。中心となる本公演は5月3日から5日までの3日間。石川県立音楽堂、金沢市アートホール、北國新聞赤羽ホールを会場に、バラエティに富んだプログラムが組まれた。休憩なしの短時間の公演が、複数の会場で朝から晩まで集中的に開かれる、おなじみのスタイルだ。
今回は「東欧に輝く音楽~プラハ・ウィーン・ブダペスト~」がテーマとあって、アーティスト陣も国際色豊か。注目はチェコのオストラヴァより招かれるヤナーチェク・フィル。同じくチェコの指揮者レオシュ・スワロフスキーとともに来日し、チェコ音楽の傑作を披露する。海外オケの来日は4年ぶり。土地に根ざしたオーケストラの響きを味わうことができるだろう。とりわけ期待が高まるのは、スメタナのオペラ《売られた花嫁》ハイライト[C23]。ソプラノのテレザ・マトロヴァ、テノールのトーマス・チェルニーが共演する。チェコの民族舞曲や民謡の要素がふんだんに盛り込まれた作品だけに、本場のオーケストラで聴く機会は貴重だ。
同じくチェコからは2016年エリザベート王妃国際音楽コンクール優勝のピアニスト、ルーカス・ヴォンドラチェックが来日。スークやスメタナの独奏曲[A33]、リストのピアノ協奏曲第1番ほか[C12]でテクニシャンぶりを発揮するだろう。
ウィーン・フィルのチェロ奏者、セバスティアン・ブルーは、広上淳一指揮ヤナーチェク・フィルとの共演でドヴォルザークのチェロ協奏曲を演奏する[C31]。ソニークラシカルからデビューアルバムをリリースするなど、ソリストとしても活躍するブルーの妙技を堪能したい。また、ブルーはヘーデンボルク直樹らウィーン・フィルの仲間たちを中心にした「ウィーン チェロ・アンサンブル5+1」の一員としても出演する。こちらはチェロ5人にウィーン・フィルのフルート奏者カリン・ボネッリが加わったアンサンブル。だれもがリラックスして楽しめるプログラムを用意してくれた[H34、K14、AK7]。
ハンガリーからはハンガリー・ジプシー・バンドが登場。ツィンバロム、ヴァイオリン、チェロという民族色豊かなトリオで、邦楽ホールに東欧からの熱い風を吹き込む[H32]。また、同じくハンガリーよりMusiColore(ムジコローレ)ハンガリー声楽アンサンブルも参加。コダーイらの作品で清澄なハーモニーを聴かせる[AK3、AK6]。
ピアニストのマルティン・シュタットフェルトは、渡邊荀之助らの能舞と中村香耶のモダンバレエと共演して、ムソルグスキーの「展覧会の絵」全曲に挑む[H33]。この音楽祭ならではの異色のコラボレーションだ。
国内勢も実力者がそろう。国際舞台で活躍する沖澤のどかはオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)とともにモーツァルトのオペラ《ドン・ジョヴァンニ》ハイライトを指揮する[C33]。プラハで初演されたモーツァルト屈指の人気作だ。沖澤は昨年、セイジ・オザワ松本フェスティバルで《フィガロの結婚》を指揮して大成功を収めたが、《ドン・ジョヴァンニ》はいかに。三戸大久が題名役を務める。
OEKのアーティスティック・リーダーの広上淳一は、太鼓の林英哲、英哲風雲の会らとの共演で石井眞木「モノプリズム」を指揮[C15]。日本の太鼓と西洋楽器の融合から独自の音響が生み出される。
「炎のマエストロ」こと小林研一郎は、群馬交響楽団とともにスメタナの連作交響詩「わが祖国」全曲を振る[C21、C22]。チェコの歴史と自然が描かれたマエストロ得意のレパートリーだ。同じく十八番のチャイコフスキーの交響曲第5 番も熱い演奏になりそう[C14]。
室内楽ではOEKの名手たちがさまざまな編成で東欧の名曲に取り組む。コンサートマスターのアビゲイル・ヤングらと竹田理琴乃のピアノによるドヴォルザークのピアノ五重奏曲第2番[A13]他、多彩なプログラムで親密な音の対話をくりひろげる。
(ぶらあぼ2023年5月号より)
※出演を予定しておりましたルーカス・ヴォンドラチェック(ピアノ)は、ご家族の健康上の理由のため、来日が困難となりました。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。(4/25主催者発表)
【出演者変更のお知らせとお詫び】ルーカス・ヴォンドラチェック氏(C12, A33)
【information】
いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭 2023
会期:2023.4/28(金)~ 5/5(金・祝) [本公演]5/3(水・祝)~ 5/5(金・祝)
会場:石川県立音楽堂、金沢市アートホール、北國新聞赤羽ホール、北陸エリア(福井・石川・富山)
問:いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭 実行委員会事務局076-232-8113
https://www.gargan.jp/
※本文内の[ ]は公演番号です。各公演の詳細はウェブサイトでご確認ください。