【SACD】リサイタル/金川真弓&ジュゼッペ・グァレーラ

 この数年で屈指の名ヴァイオリニストとして広く知られる存在になった、金川真弓のデビュー盤。昨秋のリサイタルツアー直後のセッション録音で、「リサイタル」を再現する趣向。CD中盤の武満とドビュッシーは、華美にならない色調で硬派に楽曲の本質をつかむ。「クロイツェル」は、響きは研ぎ澄まされ、ハートは熱く、まっすぐに大作の世界に入り込み、見事な構築をみせる。ピアノは強いタッチでその解釈を補強。そして無伴奏ソナタの見事さ! 誠実に穏やかに、しかし感興豊か。音色は澄みきり、密度は高く、いつまでも浸りたいバッハの名演。大器の誕生を確信する。
文:林昌英
(ぶらあぼ2023年4月号より)

【information】
SACD『リサイタル/金川真弓&ジュゼッペ・グァレーラ』

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 ハ長調/武満徹:妖精の距離/ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調/ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番 イ長調「クロイツェル」

金川真弓(ヴァイオリン)
ジュゼッペ・グァレーラ(ピアノ)

オクタヴィア・レコード
OVCL-00802 ¥3520(税込)