飯森範親(指揮) 東京交響楽団

サイが巻き起こす“トルコの風”


 新音楽監督ジョナサン・ノットをはじめ、正指揮者に名を連ねる飯森範親ら、充実の指揮者陣を誇る東京交響楽団。10月の東京オペラシティシリーズでは、トルコの鬼才ファジル・サイを迎え、飯森の指揮で意欲的なプログラムを披露する。
 『トルコの風』と題されたこの日のプログラムは、新旧トルコ尽くしといったところ。トルコ趣味全開の軽快な作品、モーツァルトの《後宮からの逃走》序曲で幕を開け、ファジル・サイの独奏で同じくモーツァルトのピアノ協奏曲第21番が演奏される。そして、注目のメイン・プログラムはファジル・サイ作曲の交響曲第1番「イスタンブール・シンフォニー」。ピアニストとしてのファジル・サイと、作曲家としてのファジル・サイの両方を聴くことができる。
 「イスタンブール・シンフォニー」では、オーケストラにトルコの民族楽器が加わるという、東西文化の交叉点イスタンブールを題材にした本作ならではの編成が採用されている。ブルジュ・カラダーのネイ(葦を素材とした笛)、ハーカン・ギュンギョルのカーヌーン(撥弦楽器)、アイクト・キョセレルリの打楽器といった3人の奏者が共演して、独特のサウンドを作り出す。作風は明快で、エキゾチックかつパワフル。7つの楽章がさまざまなイスタンブールの情景を描く。
 秋に吹く“トルコの風”は思いのほか熱い風になりそうだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年9月号から)

第82回 東京オペラシティシリーズ
10/11(土)14:00 東京オペラシティコンサートホール
問:TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp