さまざまな編成で楽しむ調布ならではのスペシャルバージョン!
文:原典子
2001年の連載開始から昨年20周年を迎えた『のだめカンタービレ』。コミックスの新装版が刊行されたり、「のだめカンタービレ展」が開催されたりと、今なお色褪せぬ人気でクラシック音楽ファンの裾野を広げている。そんな『のだめ』の世界を当代一流の音楽家による演奏とトーク、さらには原作のイラストを投影したスクリーンで楽しめるコンサートが調布市グリーンホールの「生で聴く“のだめカンタービレ”の音楽会」。6回目を迎える今回はクリスマスコンサートということで、華やかなメンバーと賑やかなプログラムが予定されている。
まずは三舩優子によるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」第2楽章からスタート。千秋(オレ様主義の指揮者)がはじめて主人公のだめ(変態&天才ピアニスト)の弾くピアノを耳にして、「これじゃ『悲惨』だ」と呟く、いわばふたりの出会いの曲だ。けれど、千秋はすぐに「デタラメだけど間違ってるんじゃない……すごいうまい!」と気づき、のだめの才能に惹かれていく。
続いてベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「春」第1楽章は、峰(ロックなヴァイオリニスト)の試験の伴奏を頼まれたのだめが、千秋のアドバイスを受けながら練習する曲。結局、試験当日にのだめが熱を出して千秋が伴奏をしたわけだが……。今回はNHK交響楽団第1ヴァイオリン奏者として、またソロや室内楽でも活躍中の猶井悠樹のヴァイオリンと、三舩のピアノによるデュオで聴くことができる。
今回は、この公演のために特別に編成された桃ケ丘フェスティバル・オーケストラが登場するのも大きなポイント。ヴァイオリニストの大庭絃子の声掛けで若手演奏家たちが集い、猶井がコンサートマスターを務めるオーケストラである。指揮をするのは、『生で聴く“のだめカンタービレ”の音楽会』の企画者であり、ご案内役も務める茂木大輔。長きにわたりNHK交響楽団の首席オーボエ奏者として楽団をリードしてきた茂木が、モーツァルトのオーボエ協奏曲を指揮する。ソリストを務めるのは、現在NHK交響楽団でオーボエ奏者を務める池田昭子。『のだめ』では、千秋のもとに集った精鋭たちによるR☆Sオーケストラが、お披露目公演で黒木(真面目なオーボエ奏者)をソリストにこの曲を演奏した。のだめに恋する黒木のモーツァルトはピンク色に染まっていたが、果たして何色のモーツァルトを聴かせてくれるだろう?
桃ケ丘フェスティバル・オーケストラではもう1曲、大庭がソリストを務めるサラサーテの「カルメン・ファンタジー」も演奏される。『のだめ』では清良(実力派ヴァイオリニスト) がR☆Sオーケストラのコンサートミストレスを務めているが、海外で活動するため離れることになり、最後のコンサートで演奏したのがこの曲。ヴィルトゥオジティを極めたソロが楽しみだ。
大庭絃子 ルミエ・サクソフォンカルテット
また今回は、ソリストやオーケストラだけでなく、多彩なユニットも登場する。4人の女性サクソフォン奏者による四重奏団、ルミエ・サクソフォンカルテットもそのひとつ。ヘンデルの《水上の音楽》より〈アラ・ホーンパイプ〉と、フラメンコとジャズを融合した音楽で知られるスペインのサクソフォン奏者、イトゥラルデによる《小さなチャルダッシュ》を演奏する。サクソフォンという楽器の持つ表現や音色の多彩さを味わうことができるだろう。
もうひと組、三舩のピアノと堀越彰のドラム&パーカッションによるデュオ、オブセッションにも注目したい。2014年に結成されたオブセッションは、クラシックのピアノとドラムという異色の組み合わせで、耳馴染みのあるクラシックの名曲に高揚感や疾走感をもたらし、新鮮な風を送り込んできた。今回はボロディンの「ダッタン人の踊り」のほか、住谷美帆(ルミエ・サクソフォンカルテットのメンバー)とともにミヨーの「スカラムーシュ」を演奏する。「スカラムーシュ」はブラジルのオーケストラに客演した千秋が、ラテンのムードに押され、「のだめのプロポーズを受けよう!」と決意する曲だ。
そしてコンサートの最後には、とびきりのメインディッシュが待っている。出演者全員の演奏によるガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」。桃ケ丘音大の学園祭で、千秋のAオケに対抗したSオケが演奏した曲で、マングースの着ぐるみをきたのだめがピアニカを吹くところからはじまる伝説のステージは、『のだめ』のハイライトのひとつ。平沼有梨の編曲では、どのような姿を見せてくれるのだろうか? 日本を代表する腕達者たちによる、遊び心に満ちたステージを期待したい。
『のだめ』でクリスマスといえば、音楽に情熱を燃やす若き仲間たちが集い、こたつを囲んでわいわいドタバタ過ごすシーンが印象的だ。そんな彼らが放つキラキラとした輝き、そこから生まれる音楽を、クリスマスの夜に皆さんと一緒に味わいたい。
Message from 茂木大輔
調布の「のだめカンタービレの音楽会」は、オケ、ピアノ、室内楽と進んできて、今年はなんとドラムとピアノの超精密ユニットである「オブセッション」、新進気鋭すぎるサクソフォン奏者住谷美帆さんと彼女の率いるカルテットなど、全国で初めてとなる「攻めた」人選に、N響オーボエの花・池田昭子さん+元「12人」の大庭絃子さんの室内オケという、王道クラシックも配した全く新しいプログラムでクリスマスをパワフルに彩ります。「スカラムーシュ」など初登場曲も。原作のどこで出てくるか、予習ヨロシコ!笑
Message from 三舩優子
今回はソロ、伴奏、そしてOBSESSIONとして出演させていただくこととなり、まさにクリスマスパーティーのような楽しい公演になるのではと、今からワクワクしています。OBSESSIONは“歌うドラム”と絶賛される堀越彰さんと2014年より「最小にて最大のオーケストラ」というコンセプトのもと活動しており、クラシックの名曲の素晴らしさとスケール感を独自の世界観で熱く伝えるデュオです。どうぞご期待ください!
生で聴く“のだめカンタービレ”の音楽会 Vol.6
2022.12/25(日)15:00(開場14:15) 調布市グリーンホール 大ホール
茂木大輔(企画・指揮・ご案内)
オブセッション 三舩優子(ピアノ)× 堀越彰(ドラム&パーカッション)
ルミエ・サクソフォンカルテット
(住谷美帆、戸村愛美、中嶋紗也、竹田歌穂)
池田昭子(オーボエ)
大庭絃子(ヴァイオリン)&桃ケ丘フェスティバル・オーケストラ
猶井悠樹(コンサートマスター)
ベートーヴェン:ピアノソナタ「悲愴」第2楽章(三舩)、ヴァイオリンソナタ「春」第1楽章(猶井&三舩)
モーツァルト:オーボエ協奏曲K314(池田&桃ケ丘フェスティバル・オーケストラ)
ヘンデル:『水上の音楽』より「アラ・ホーンパイプ」(ルミエ・サクソフォンカルテット)
イトゥラルデ:小さなチャルダッシュ (ルミエ・サクソフォンカルテット)
サラサーテ:カルメン・ファンタジー(大庭&桃ケ丘フェスティバル・オーケストラ/平沼有梨編曲)
ボロディン:ダッタン人の踊り(オブセッション)
ミヨー:スカラムーシュ(住谷&オブセッション)
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー(全員/平沼有梨編曲)
※曲目は都合により変更になる場合があります
ちょうふアートプラス会員 4,500円
一般 5,000円
U25 3,000円
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