新国立劇場バレエ団が10月21日より、吉田都・舞踊芸術監督の演出デビューとなる新国立劇場 開場25周年記念公演『ジゼル』を新制作で上演する。10月3日、吉田監督、改訂振付のアラスター・マリオット、主演ダンサー(木村優里&福岡雄大、池田理沙子&速水渉悟)が登壇し、制作発表が行われた。
(2022.10/3 新国立劇場 オペラパレス)
『ジゼル』は、村娘ジゼルが恋人アルブレヒトに婚約者がいることを知り、錯乱のうちに息絶え、精霊となった後もアルブレヒトを守り通すというストーリー。改訂振付には、英国ロイヤル・バレエ団で吉田とも数々の作品で共演、現在は振付家として活躍するアラスター・マリオットが、美術・衣裳には、オペラやバレエで世界的に活躍し、新国立劇場バレエ団『火の鳥』『アラジン』の装置デザインを手掛けたディック・バードがそれぞれ担当。第2幕の舞台装置は、ジゼルと同様に亡くなった若い女性たちのお墓が、リトアニアの「十字架の丘」に着想を得て表現される。
吉田は記念シーズンの開幕にロマンティック・バレエの名作を選んだ想いを次のように語った。
「サー・ピーター・ライトの『ジゼル』で育ち、若いときから主役を踊り一から教えていただいた、とても大切な作品です。原型を留めたままこれだけ長く踊り継がれている演目は少なく、それは作品にいまでも共感できるメッセージが込められているからだと思います。
サー・ピーターがその踊りに魅せられ、たくさんの『ジゼル』を手掛けるきっかけとなったガリーナ・ウラノワが著書の中で、『ジゼル』には詩情、純潔、人間の知性、信頼、勇気などがあると書いています。だからこそ観客に力強いメッセージを伝えられるではないかと感じます」
「私自身がクラシックバレエにずっとこだわってきていますので、そのスタイルはきっちりと守りつつ、お客さまによりストーリーが伝わるような演技、表現をと準備している最中です。マリオットも私もサー・ピーターの『ジゼル』で育っているので、ピーターのコピーではいけない。しっかりとした下準備をしてくださったからこそ、いま細かい調整の時間がもてています。ダンサー、スタッフが意見を出し合い、みなで創っている雰囲気は毎日ワクワクします」
分厚い資料「バイブル」を毎日肌身離さず持ち歩いているという改訂振付のアラスター・マリオット。吉田、バレエ団の印象について、「MIYAKOは踊りが洗礼され、とてもクリーンなダンサーで、彼女の持つ音楽性と動きはまさにイギリスのスターと呼ぶにふさわしい。最高のテクニックをもっていながら、テクニックを超えた芸術性が全面にでるような踊りです。
古典作品に新たに振付をする機会をいただいたことに感謝し、彼女が求めるものを具現化できることにワクワクしています。『ジゼル』にはモダンな解釈もありますが彼女が求めているのはそういうものではなかった。舞台・音楽的にも(英国ロイヤル・バレエ団という)同じバックグラウンドをもった私たちが、同じ風景を見ていることに安心しました。今回は、演技をすること、踊ること、衣裳から舞台装置に至るまで、イングリッシュ・スタイルを正統に受け継ぎながら作品を作っていくことが明確なゴール。振付家の人生は、皆が同じゴールに向かって一生懸命働けば、とても楽なものです。この劇場ではダンサーだけでなく、スタッフの皆さん全員が、完成を目指して一生懸命になってくれるのを嬉しく思います」。
会見には、同劇場バレエ研修所出身で、今シーズよりプリンシパルに昇格した木村優里ほか、福岡雄大、『ジゼル』初主演となる池田理沙子と速水渉悟、主演ダンサー5組のうち2組が登壇し、それぞれの意気込みを語った。
木村「マリオットさんのご指導によって舞台全体の一人ひとりの人物像が明確になった気がしています。1幕の村人たちの境遇や生活感、アルブレヒトとジゼルの掛け合いがよりナチュラルで、古典的な部分は残しつつ、日常に近く演じられています」
福岡「些細だけれど舞台で観るとすごく効果的なことなどを教えていただいています。演劇的な要素が多く、『ロミオとジュリエット』『マノン』など英国風なドラマチックさが最高な状態で仕上がるように練習しているところです」
池田「今回、ペザント パ・ド・ドゥも踊るのですが、テクニカルな面でもハードな構成になっていますが、物語が進む中で盛り上がるシーンの一つなので、速水さんと2人でがんばっていきたいです。(アルブレヒトとジゼルは)お互い初挑戦となるので、毎日細かく確認しながらリハーサルに臨んでいます」
速水「大切なところは残しながら自分なりのアルブレヒトを考えてリハーサルに臨んでいます。ただ見つめ合うシーンでも何を考えているか、どういった仕草をすると観客に伝わりやすいかを理沙子さんと話し合いながら創っています。ペザントではキャラクター性もまったく違うので、ぜひどちらも観に来てください!」
芸術監督とゆかりのあるスタッフが集結し、2020年『竜宮』に続き新国立劇場バレエ団が世界へと発信する全幕バレエへの期待が高まる。
【Information】
新国理劇場 開場25周年記念公演
新国立劇場バレエ 2022/23シーズン
新国立劇場バレエ団『ジゼル』(新制作)
2022.10/21(金)〜10/30(日) 新国立劇場 オペラパレス
振付:ジャン・コラリ、ジュール・ペロー、マリウス・プティパ
演出:吉田都
改訂振付:アラスター・マリオット
音楽:アドルフ・アダン
指揮:アレクセイ・バクラン、冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
出演
10/21(金)19:00、10/27(木)14:00
ジゼル:小野絢子 アルブレヒト:奥村康祐
10/22(土)13:00、10/30(日)14:00
ジゼル:柴山紗帆 アルブレヒト:井澤駿
10/22(土)18:00、10/28(金)19:00
ジゼル:木村優里 アルブレヒト:福岡雄大
10/23(日)14:00、10/29(土)18:00
ジゼル:米沢唯 アルブレヒト:渡邊峻郁
10/29(土)13:00
ジゼル:池田理沙子 アルブレヒト:速水渉悟
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet-dance/