神奈川フィルハーモニー管弦楽団 小泉和裕 特別客演指揮者就任披露公演

名匠で聴くロシアの名作2編


 地元横浜を中心に積極的な演奏活動を展開している神奈川フィルにとり、新たな門出となる2014年。4月の常任指揮者就任披露公演で大成功を収めた川瀬賢太郎に続き、今回は同時期に特別客演指揮者に就任した小泉和裕が登場する。
 1973年の第3回カラヤン国際指揮者コンクールで優勝した後、ベルリン・フィルを指揮してベルリン・デビューを飾るなど、20世紀を代表する巨匠から多大な薫陶を受けた小泉。今回の公演は、カラヤンの十八番のひとつだったチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」をメインに据えたプログラム。第1楽章冒頭のレクイエム的な暗さから、最終楽章の切々とした哀愁まで、この傑作交響曲をくり返し演奏し続けたカラヤン。小泉はその伝統を最も正統的な形で継承した、雄大で緻密極まりない解釈で聴かせてくれることだろう。そして、この名作の序章のように前半で演奏されるのが、同じロシアの作曲家グラズノフの代表作として名高いバレエ音楽「四季」。季節ごとの象徴的な事柄(冬の雪、春の花、夏の舟歌、秋のバッカス礼賛など)を擬人化した作品で、冬から始まり、春、夏、秋へと進んでゆく、北国ロシアならではの独特な配列が特徴。凍てつく厳寒の冬、短くも生き生きとした春と夏を経て、実りの秋へ。中でも、金管の急速なリズムにのってヴァイオリンが収穫の喜びを歌い上げる「秋」は、聴き応え十分で特におすすめだ。
文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年8月号から)

第301回 定期演奏会 みなとみらいシリーズ
8/29(金)19:00 横浜みなとみらいホール
問:神奈川フィルチケットサービス045-226-5107 
http://www.kanaphil.or.jp