32年前の再現が告げる新時代の幕開け
2023年4月に新日本フィルハーモニー交響楽団の第5代音楽監督に就任する佐渡裕が、まずこの4月、同楽団のミュージック・アドヴァイザーに就任した。そして翌5月、早速定期演奏会に登場する。
R.シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」、バーンスタインの「前奏曲、フーガとリフス」、ベートーヴェンの交響曲第7番というプログラムは、1989年にブザンソン国際指揮者コンクールに優勝した直後の1990年1月に新日本フィルを振った凱旋公演を再現したもの(その後、佐渡は1992年から95年まで新日本フィルの“指揮者”を務めた)。この3曲は、どれも若き日の佐渡が恩師レナード・バーンスタインから直接学んだ作品である。ベートーヴェンの第7番は、1989年にボンでのウィーン・フィルとの同曲の演奏を終えたばかりのバーンスタインに彼の楽屋でレッスンを受け、日本デビューで指揮することを勧められた作品であり、「ドン・ファン」は、バーンスタインが講師を務めたシュレスヴィヒ゠ホルシュタイン音楽祭のマスタークラスで取り上げられた曲目。「前奏曲、フーガとリフス」についても作曲者自身から教えを受けた経験を持つ。まさに、佐渡にとって、キャリアの原点となる作品であり、同時に十八番のレパートリーである。あれから30余年、新日本フィルとの古くて新しい関係を深めるには最適の作品といえるだろう。
佐渡裕と新日本フィルの新たな船出が聴き逃せない。
文:山田治生
(ぶらあぼ2022年5月号より)
第641回 定期演奏会 トリフォニー・シリーズ
2022.5/21(土)14:00 すみだトリフォニーホール
サントリーホール・シリーズ
5/23(月)19:00 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp