ショパン、ルービンシュタイン、チャイコフスキーと数々の国際コンクールで上位入賞を果たし、今や国際的に活躍するピアニストの中でも特に注目される存在の一人となったダニール・トリフォノフ。これまでショパンやリスト、ラフマニノフなどロマン派以降の作品を取り上げてきたが、今回はバッハ、しかも最晩年の傑作「フーガの技法」を中心に、バッハの息子たちの作品も収めたコンセプト性の高い盤である。トリフォノフの透明感ある美しい音色と精密なコントロールが最大限に発揮されており、重なり合う旋律の一つひとつに違った色が感じられ、音の重なりの美しさを実感できる演奏である。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2021年11月号より)
【information】
CD『バッハ:アート・オヴ・ライフ/ダニール・トリフォノフ』
J.C.バッハ:ソナタ第5番/W.F.バッハ:ポロネーズ第8番/C.P.E.バッハ:ロンド ハ短調/J.C.F.バッハ:「ああ、お母さん聞いて」による変奏曲/J.S.バッハ:「アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳」から、シャコンヌ(ブラームス編)、フーガの技法、主よ 人の望みの喜びよ(ヘス編)
ダニール・トリフォノフ(ピアノ)
ユニバーサル ミュージック
UCCG-45035/6(2枚組) ¥3850(税込)