飯守泰次郎(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

円熟の名匠がもたらす崇高な音楽体験

飯守泰次郎
C)金子 力

 これは、オーケストラ公演では滅多に聴けないプログラムだ。東京シティ・フィルの7月定期で、ブラームスの「ネーニエ(悲歌)」とブルックナーのミサ曲第3番が演奏される。合唱を主体とした独墺の名作が揃った上に、指揮が同楽団の桂冠名誉指揮者・飯守泰次郎となれば、見逃せるはずがない。
 「ネーニエ」は、ブラームスが交響曲第2番と第3番の間の充実期に、友人を追悼して書いた作品。シラーの詩による合唱+管弦楽曲で、死者の生命の浄化を歌った感動的な名品だ。ブルックナーのミサ曲第3番は、交響曲第1番に続く時期に書かれた、全6曲・1時間弱の大作。4人のソリストと合唱、管弦楽による壮大かつ敬虔な音楽で、彼の声楽作品のみならず、古今のミサ曲の中でも屈指の傑作と称されている。いずれも日本での生演奏は少なく、関係が微妙なロマン派の大家二人が40代に残した声楽作品の比較も含めて、貴重な一夜となる。
 今や重鎮格の飯守は、今年1月の同楽団定期におけるブラームスの交響曲や新国立劇場の《フィデリオ》等で、重厚かつ濃密な演奏を聴かせているだけに、このところ充実著しいシティ・フィルと共に奏でる独墺音楽の真髄・深奥への期待は大きい。さらには、「ドイツ・レクイエム」「テ・デウム」など二人の作品に実績があり、昨年9月の「天地創造」でも大きな成果をあげた東京シティ・フィル・コーアと、二期会の実力者を揃えたソリスト陣も心強い限りだ。そして会場の東京オペラシティはこの種の合唱音楽にこの上ない空間。ここはぜひ、日常では味わえない厳粛・荘厳な音体験に浸りたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2018年7月号より)

第317回 定期演奏会
2018.7/13(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
http://www.cityphil.jp/