ピアノとドラムとで拓く未知の領域
ピアノとドラム。ありそうでなかった組み合わせのユニットが、クラシック音楽界に新風を巻き起こす。ユニット名はOBSESSION、“取り憑かれる”ことを意味する。ピアノは国内外での活躍が目覚ましい三舩優子、ドラムは1990年に「山下洋輔ニュートリオ」でデビュー以来、精力的に活動を続ける堀越彰。
アーティストとして油の乗り切った2人が最初に共演したのは2014年。すでに多数の公演を行ってきたが、この5月に満を持してデビューアルバム『OBSESSION』をリリースした。ボロディンの「ダッタン人の踊り」、ラフマニノフの前奏曲「鐘」といったクラシックのレパートリーを取り上げ、ピアノは旋律的・和声的にいわば音楽の「前景」を担い、ドラムは時に眩い光のように挿し込み、時に影となって闇を深める。シチェドリンの「バッソ・オスティナート」、ヒナステラの「アルゼンチン舞曲集」、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」では、推進力に溢れるビートで突き進み、サティの「ジムノペディ第1番」では互いに間合いを測り合いながら奥行きのある音楽をじっくりと作り上げる。耳にするまではピアノとドラムの組み合わせを想像しがたくとも、聴いた瞬間に納得させられ、同時に意外性の連続で“取り憑かれ”てしまう!
7月8日にはヤマハホールでCD発売記念コンサートが開かれる。ショッキングなまでにクールな2人の実演サウンドに胸が熱くなるだろう。生のセッションでこそ味わえる迫力を楽しみたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ 2017年7月号から)
7/8(土)14:00 ヤマハホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp/
CD『OBSESSION』
オクタヴィア・レコード
OVCT-00132
¥3000+税