【会見レポート】パリ・オペラ座バレエ団 まもなく日本公演開幕!

 パリ・オペラ座バレエ団2017年日本公演が3月2日(木)より始まり、『ラ・シルフィード』と〈グラン・ガラ〉の2演目が上演される。2月27日(月)、開幕を前に記者会見が行われ、パリ・オペラ座総裁のステファン・リスナー、アマンディーヌ・アルビッソン(エトワール)、レオノール・ボラック(同)、マチアス・エイマン(同)、ジョシュア・オファルト(同)、リュドミラ・パリエロ(同)、ユーゴ・マルシャン(プルミエ・ダンスール)、クロティルド・ヴァイエ(バレエ・ミストレス)が登壇した。
(2017.2/27 東京都内 取材・文:高橋森彦 Photo:J.Otsuka/TokyoMDE)

左より:ステファン・リスナー(パリ・オペラ座総裁)、レオノール・ボラック、ジョシュア・オファルト、リュドミラ・パリエロ、
マチアス・エイマン 、ユーゴ・マルシャン、アマンディーヌ・アルビッソン 、クロティルド・ヴァイエ(バレエ・ミストレス)

 350年以上の歴史を誇りバレエ界の頂点に君臨し続けるパリ・オペラ座バレエ団の来日は、今回で15回目。日本舞台芸術振興会による招聘としては9回目となる。
 最初の演目『ラ・シルフィード』(音楽:シュナイツホーファー)は、1832年にオペラ座で初演されたロマンティック・バレエの名作をピエール・ラコットが1972年に復元・振付したもの。スコットランドを舞台に青年ジェイムズとシルフィード(空気の精)の悲恋が描かれる。「ピュアでロマンティック。感情のパレットで、さまざまなニュアンスや感情を披露しなければならない」(エイマン)、「一つのスタイルや様式を示している作品」(オファルト)と語るようにオペラ座ならではのレパートリーだ。「マジカルな物語を皆様にお届けしたい」(アルビッソン)、「皆様に大きな喜びをあたえられる公演になることを願っています」(パリエロ)、「美しい物語で皆さまに心地よいひとときを過ごしていただければ」(マルシャン)と抱負を語った。

左より:ジョシュア・オファルト(エトワール)、アマンディーヌ・アルビッソン(エトワール)、ユーゴ・マルシャン(プルミエ・ダンスール)

リュドミラ・パリエロ(エトワール)

 3月9日(木)に幕を開ける〈グラン・ガラ〉は、ジョージ・バランシン振付『テーマとヴァリエーション』、ジェローム・ロビンズ振付『アザー・ダンス』、バンジャマン・ミルピエ振付『ダフニスとクロエ』によるミックス・プログラム。「それぞれチャイコフスキー、ショパン、ラヴェルという3人の作曲家の音楽も楽しんでいただけます。『ダフニスとクロエ』(2014年初演)は新しい作品。舞台美術を現代美術家のダニエル・ビュランが手がけているのも注目点です」とリスナー総裁が見どころをアピール。オペラ座の洗練の極みと革新性を堪能できそうだ。

 今回の見逃せない点は新世代の台頭である。16年2月に前任者・ミルピエの在任期間わずか1年半での衝撃的な辞任を受けて芸術監督に任命されたオレリー・デュポンは、昨年末、若手気鋭のジェルマン・ルーヴェとボラックを相ついでエトワール(ダンサーの最高位)に任命した。ボラックは「エトワールになったと考えすぎると緊張・恐怖のもとになるので、プルミエール・ダンスーズのときと変わらず継続していくことを心がけています」と冷静にコメントした。

レオノール・ボラック(エトワール)

レオノール・ボラック(右)の話す姿をやさしいまなざしでみつめるマチアス・エイマン(左、エトワール)

 オペラ座きっての名花として知られ、15年にオペラ座でのアデュー(さよなら)公演を行ったデュポンが芸術面を統括し約1年が過ぎた。リスナー総裁はオペラ座バレエ団の芸術監督の条件として「大切なのは歴史を維持すること。それも単なる歴史ではなくて、パリ・オペラ座特有の歴史を維持していかなければならない。古典が新しいバレエに栄養をあたえ、新しいバレエが古典に刺激をあたえる。歴史を大切にするとともに現代性も大切にしていくことが求められます」と話す。そして、デュポンは相応しいと述べ、来シーズンに組んだ古典に加え新進振付家も起用した意欲的なプログラムを評して「能力にあふれた芸術監督」と称賛した。いっぽうで、フランスに生まれたがアメリカでキャリアを積み、大胆な若手起用などで注目を集めたミルピエに対し「ブリジット・ルフェーブル(ミルピエの前任)の長い時代の後で一度外からの視線をあたえることは大事だったと思います。デュポンの就任に関して、ミルピエの1年半なくしては、そういう結論に至りませんでした。ミルピエの1年半は、さまざまなものを動かしたという意味でカンパニーにとって重要だったと申し上げておきます」と明言した。

ステファン・リスナー(パリ・オペラ座総裁)

 デュポンの芸術監督としての仕事ぶりはどのようなものか。「役になじんで決断を行っていると思います。彼女が行うチョイスに信頼を寄せています」(エイマン)、「アドミニストレーション、事務的な面でもダイナミックに物事がなされていると証言しておきます。チーム全体が良い雰囲気で物事が進んでいます」(ヴァイユ)といった反応が続き、ダンサーやスタッフから全幅の信頼を得ていることがうかがわれた。

マチアス・エイマン

クロティルド・ヴァイエ(バレエ・ミストレス)

 パリ・オペラ座バレエ団といえば伝統を誇りつつ進取の精神をもって革新的な取り組みを行う“バレエの殿堂”というのがトレードマークだが、会見からもその息吹を感じた。また厳格な階級制が敷かれつつ家庭的でヒューマンな側面もあるバレエ団の温かみも伝わってきた。世界最高峰のカンパニーの舞台に酔いしれるバレエ週間がいよいよ始まる。


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【公演情報】
パリ・オペラ座バレエ団2017年日本公演
『ラ・シルフィード』
2017.3/2(木)18:30、3/3(金)18:30、3/4(土)13:30 18:30、3/5(日)15:00
東京文化会館

〈グラン・ガラ〉
『テーマとヴァリエーション』 
『ダフニスとクロエ』 
『アザー・ダンス』
2017.3/9(木)18:30、3/10(金)18:30、3/11(土)13:30 18:30、3/12(日)15:00
東京文化会館

※公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。 
問 NBSチケットセンター03-3791-8888 
http://www.nbs.or.jp/