年頭からリムスキー=コルサコフ作曲『シェラザード』で濃密なデュエットを繰り広げて感銘を与えた勅使川原三郎と佐東利穂子。その直後、勅使川原と佐東は渡欧し、パリ・オペラ座の2017/18シーズン発表会見に出席、10月にバレエ団に振り付けする新作(音楽:エサ=ペッカ・サロネンのヴァイオリン協奏曲、演奏:諏訪内晶子)への意気込みを語るなど、今年も精力的な活動を展開中だ。3月に、昨年「あいちトリエンナーレ2016」で演出を手がけたモーツァルトのオペラ《魔笛》を神奈川と大分で再演すると、4月は両国のシアターXで、「言葉と音楽とダンス」をテーマにしたシリーズの一環として、ワーグナー作曲『トリスタンとイゾルデ』の舞台が待っている。これは、昨年、本拠地のカラス・アパラタスの<アップデイトダンス>で初演したものを装いも新たに再演する試みで、よりブラッシュアップされた舞台がお目見えすることだろう。
初演では、4時間の壮大な楽曲を約1時間に凝縮、勅使川原と佐東は、大河のうねりに身を任せるように「生と死」のダンスを踊り、オペラを見たような充足感を与えたのが記憶に新しい。創作の動機は、ワーグナーの驚異的な音楽だったとか。「『愛の死』に身も心も奪われて引きこまれてしまう悲劇的陶酔感」がより広い空間で、いかなる変容を見せてくれるか興味は尽きない。ダンス・ファンのみならずオペラ・ファンにもお勧めしたいステージである。
文:渡辺真弓
(ぶらあぼ 2017年3月号から)
4/26(水)〜4/30(日) シアターX
問:KARAS 03-6276-9136
http://www.st-karas.com/