上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

輝かしくも幸福な音楽

 新日本フィル、3月の『トパーズ』定期演奏会は、上岡敏之が指揮をするドイツ語圏音楽のプログラム。となれば、これまでの演奏会でスタンダードな曲を斬新なアプローチにより刷新してきた実績ゆえ、期待を胸に足を運びたくなる。ベートーヴェンの交響曲第1番、シューマンの第2番という2つのハ長調交響曲は、19世紀ドイツ音楽の本流を形成する作品。長くドイツを拠点に活動してきたという上岡の実績が、雄弁な音楽を創造することだろう。揺るぎない音楽の軸と、そこから生まれるエネルギー、そしてライヴの躍動感。上岡&新日本フィルならではの演奏には、不思議な興奮が満ちているのだ。
 さらには首席ファゴット奏者の河村幹子が「この2つの交響曲の間であれば、この曲しかない!」と選んだ、モーツァルトのファゴット協奏曲を演奏。18歳のとき、ザルツブルクで作曲したと伝えられるが、「天才による若々しい音楽は、無駄がないゆえに難しい」と曲を評価する河村により、充実した音楽が味わえるに違いない。「家族のようなオーケストラ、まるで“わが家”のようなホール、そして曲やオーケストラの魅力を無理なく自然に引き出してくれる指揮者(音楽監督)」と語る最高の環境から、輝かしくも幸福な音楽が生まれる時間を楽しんでいただけるだろう。
 この定期演奏会は、まだ上岡&新日本フィルのコンビを体験していない聴き手にこそ、強くおすすめしたいプログラムである。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ 2017年3月号から)

第570回 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉
3/17(金)19:00、3/18(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp/