飯森範親(指揮) 東京交響楽団

ロシア・アヴァンギャルド最後の輝きを放つ傑作が遂に日本初演!

 正指揮者・飯森範親が登場する東響8月定期では、ソヴィエト1930年代最大の問題作の一つ、ポポーフの交響曲第1番が日本初演される。
 ロシア革命直後には前衛芸術が花開いたソヴィエトだが、スターリン独裁体制が揺るぎないものとなるにつれ、思想・文化・芸術面においても自由が圧迫されていったのはよく知られている。ショスタコーヴィチの代表作、交響曲第5番(1937)はそれまでの前衛的な作風に対する批判を受け作曲された、いわば反省文であった。
 それとまさに同時期に、ショスタコーヴィチと同じくらい、いやひょっとするともっと過激な音楽を書いていたのがガヴリイル・ポポーフである。ロシア・アヴァンギャルド最後の輝きとも言うべき出世作、交響曲第1番(1935)で、ポポーフは巨大オーケストラをフルに鳴らしきる。ブルドーザーのように爆走する、アドレナリン大放出の両端楽章に、リリカルな緩徐楽章が挟まれた本作は、その急進的なモダニズム性から「階級の敵」と非難され、以降は作風の転換を余儀なくされた。
 オルガ・シェプスがソリストを務める、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番にも注目したい。音楽家の両親のもとモスクワに生まれ、ドイツに移りケルン音大のパヴェル・ギリロフの下で学んだ。地道な活動を通じてじわじわと支持を広げ、ソニー・クラシカルから次々とリリースされるディスクも高い評価を得ている。チャーミングないでたちそのままに、指先から奏でられるメロディは憧憬にあふれ、時にロシア特有の強い夢想を垣間見せる。昨年初来日を果たしたが、早くも再訪だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年7月号から)

第643回 定期演奏会
8/4(木)19:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp