秋山和慶(指揮) 東京都交響楽団

名匠の職人技が光る好プログラム


 昨年、指揮者生活50周年を迎えた秋山和慶が都響の指揮台に立ち、独墺圏からお気に入りのプログラムを披露する。
 ヒンデミット「弦楽と金管のための協奏音楽」は、ボストン響創立50周年を記念して作曲された。木管や打楽器を欠いているため色彩感が弱まり、絶対音楽として厳しく構築された音楽には職人芸が光る。秋山はこのところヒンデミット作品を多く取り上げているが、最近一段とレベルアップした都響を操って曲のダイナミックな魅力を引き出してくれるはずだ。
 続いてエリック・ル・サージュをソロに迎え、モーツァルト「ピアノ協奏曲第24番」。ル・サージュといえばソロ活動はもちろんのこと、超一流管楽器奏者からなるレ・ヴァン・フランセのメンバーを務めるなど室内楽でも活躍しており、共演者の呼吸を読みながらアンサンブルを作る手腕には定評がある。モーツァルトでは持ち前の美音を軸に、典雅な演奏が期待できよう。
 後半はR.シュトラウス《ばらの騎士》組曲。若い男女の恋愛を没落貴族の哀愁を絡めつつ描いたこのオペラは、ゴージャスに彩られた愛の交歓からコミカルなワルツ、刹那に訪れる内省など、人生の喜怒哀楽を魔法のような筆致でたどっていく。今回演奏される組曲は、20世紀屈指の名オペラから聴きどころを選りすぐったもので、オペラを聴く習慣のない方にも入門編としてお勧めできる。
 秋山は地面に根を張るような揺るぎのないテンポで、精度の高いアンサンブルを組み立てる指揮者だ。太い幹から伸びる音楽の豊かな枝葉と実りを楽しみたい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から)

第808回 定期演奏会 Aシリーズ 5/30(月)19:00 東京文化会館
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp