シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団

ケラスも登場する多彩で意欲的なプログラミング

 度重なる共演を経て成熟期を迎えたシルヴァン・カンブルランと読響の名コンビ。毎回意欲的なプログラムを披露してくれるが、この6月の定期演奏会も実に楽しみな曲目がそろった。ベルリオーズの序曲「宗教裁判官」、デュティユーのチェロ協奏曲「遥かなる遠い世界」(チェロ:ジャン=ギアン・ケラス)、ブルックナーの交響曲第3番「ワーグナー」の3曲だ。
 序曲「宗教裁判官」は若き日のベルリオーズによる野心作。もともとオペラとして作曲されたものだが、たびたびの改作にもかかわらず上演に至らず、作品3として序曲のみが出版された。後の傑作群を予感させるような大胆さと力強さを持つ。
 ベルリオーズとブルックナーは、ワーグナーという補助線で結ばれる関係といえるだろうか。ベルリオーズの音楽はワーグナーに啓示を与え、そのワーグナーはブルックナーから敬愛された。ブルックナーの交響曲第3番はワーグナーに献呈されたことから、「ワーグナー」の愛称が添えられている。カンブルランと読響のブルックナーといえば、昨年の交響曲第7番での名演が記憶に新しい。作品観を更新するような、新鮮なブルックナーを聴かせてくれるのではないだろうか。
 デュティユーのチェロ協奏曲「遥かなる遠い世界」はロストロポーヴィチに委嘱された1970年の作品だが、その抒情性ゆえか現代作品としては演奏頻度が高い。ケラスの独奏は大きな聴きものとなるだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から)

第559回 定期演奏会
6/24(金)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp