歌の国のグローバルな才能を知る
これは間違いなく大注目の公演だ。マリオッティ、バッティストーニと共にイタリアの“若手三羽烏”と称される指揮者ダニエーレ・ルスティオーニが、東京交響楽団の定期演奏会にデビューする。1983年ミラノ生まれの彼は、地元の音楽院を卒業後、英国ロイヤル・オペラでパッパーノのアシスタントを務め、名匠の強い後押しを得て、20代からスカラ座、ロイヤル・オペラやトリノ、フィレンツェ、パリなどの著名歌劇場に進出。2017年には大野和士の後任としてリヨン国立歌劇場の音楽監督就任が予定されている。そして日本でインパクトを与えたのが、14年に上演された東京二期会の《蝶々夫人》。引き締まった造型と抒情美を共生させた名演で、観客を驚嘆させた。
今回の演目は意外にもロシアもの。だが東響のウェブサイトで彼が語るには「08〜09年ミハイロフスキー劇場で指揮者を務めた際、現地の空気を吸いながらテミルカーノフ&サンクトペテルブルク・フィルのロシアものを数多く聴いて、指揮するようになった。演奏会では可能な限りロシアものを入れている」(要約)との由。メインのチャイコフスキー「悲愴」交響曲には「プッチーニの《ラ・ボエーム》のようなロマンティシズムが横溢している」とも話しているだけに、オペラの如きドラマが期待される。
またショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番を弾くフランチェスカ・デゴは、1989年イタリア生まれの俊英。12年にドイツ・グラモフォンからパガニーニ「24のカプリース」でデビューした実力者だ。ちなみに今回はイケメンと美人の夫婦共演。何にせよ、音楽界の未来を示唆する本公演は、絶対に見逃せない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から)
第56回 川崎定期演奏会
6/25(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
第641回 定期演奏会
6/26(日)14:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp